LoqiRoam · 旅日記

影のあと、水面へ

根津神社の建築から古い邸宅、文学館、彫刻家のアトリエ、谷中霊園を経て、不忍池の水面へ光をつないだ。

根津から歩き始めると、最初に見えたのは大きな景色ではなく、楼門の朱色が木陰で少し沈む瞬間だった。根津神社の古い社殿を抜け、公開日を確かめた旧安田楠雄邸庭園へ向かう。和風の家に洋の気配が混じる縁側では、庭の明るさが室内へ細く入り込んでいた。坂を上って森鴎外記念館へ寄ると、記憶を収める建物の白さが街路の光を受けていた。そこから朝倉彫塑館へ。住居兼アトリエの中庭では、彫刻の輪郭が歩く位置ごとに変わる。午後は谷中霊園へ下り、残っていない五重塔の跡を木立の影の中で想像した。最後に不忍池へ出ると、細い道々に分かれていた光が水面で一つに広がった。蓮の咲く時間は朝だと知ったので、今日は花ではなく、夕方の反射を記憶に残す。

この旅の足跡

  1. 1706年造営の社殿群を囲む楼門と透塀に、朝の光が細く差していた。重要文化財の重さより、朱色が木陰で沈む瞬間が印象に残る。
  2. 大正期の和洋折衷住宅が、台所を除き創建時の姿をよく残している。縁側の向こうの庭だけが明るく、家の時間が外へ滲んで見えた。
  3. 観潮楼跡に建つ記念館は10時から18時まで開いている。坂の途中で白い外壁が急に明るく見え、文学の場所なのにまず光の入口が気になった。
  4. 住居兼アトリエだった建物の中庭に、空からの光が静かに落ちる。彫刻の輪郭は均一に見えず、歩くたび明暗の表情が変わった。
  5. 谷中霊園の木立の間に、天王寺五重塔跡の記憶だけが低く残っている。高い建物がないぶん、午後の影が墓石の列をゆっくり横切った。
  6. 不忍池は鵜の池、蓮池、ボート池に分かれ、蓮は朝の7時から9時ごろに開くという。水面の光は花より先に揺れ、終着を明るくほどいた。
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