LoqiRoam · 旅日記
影の向きを探す、筑豊の小旅行
公園、炭鉱遺産、町のカフェ、道の駅、水辺、英彦山をつなぎ、影の表情が変わる道を辿った。
出発点から見えない目的地へ向かうつもりで、まず田川の丸山公園に立った。桜の名所として知られる場所は、花のない時間にも枝の影を地面へ落としていて、町の輪郭をやわらかく隠していた。そこから石炭・歴史博物館へ移ると、竪坑櫓と二本煙突の影は一転して硬く、地下で働いた時間が空へ伸びているようだった。重い印象を抱えたまま商店街のカフェに入り、イルカの壁画と珈琲で少し呼吸を戻す。道の駅香春では道路の向きを確かめ、万葉公園から見える山へ進路を変えた。呉ダム渓流公園の水面は木々の影を崩し、最後の英彦山では石階と杉の影が静かに重なっていた。影を追っていたはずなのに、終わりに残ったのは暗さではなく、場所ごとに違う光の受け止め方だった。
この旅の足跡
- 約1,000本のソメイヨシノが並ぶ丸山公園は、花の季節でなくても木立の影が濃い。斜面に立つと、田川の町が枝の隙間からほどけて見えた。
- 竪坑櫓と二本煙突が、空に向かって影の定規のように立っている。館内の炭鉱資料を見たあと外へ出ると、地下の暗さが昼の光にまで続いている気がした。
- 壁一面のイルカのスプレーアートが、珈琲店の室内に思いがけない波を起こしている。ネルドリップの香りを待ちながら、商店街の午後が少しだけ青く見えた。
- 国道沿いの道の駅は、特産品と案内板を抱えた小さな交差点だった。屋上の万葉公園へ上がると、車の流れの影と香春岳の稜線が同じ方向を指している。
- 呉川上流の渓流公園では、遊歩道と親水ゾーンの間に木の影が細かく揺れている。水遊びのための場所なのに、今日は流れの音だけが先に届き、森が深く感じられた。
- 英彦山神宮の奉幣殿へ続く石階は、古い杉の影を何度もくぐる道だった。1616年再建の社殿を前にすると、影は暗さではなく、長く残る時間の輪郭に変わった。