LoqiRoam · 旅日記

看板の向こうの細道

苧ヶ瀬池の伝承から村国座、天狗谷遺跡を経て、各務野自然遺産の森へ。人の記憶を看板で読み、最後は森の音へ歩いた。

苧ヶ瀬から歩き始めると、まず池の水面と案内板が旅の速度を落としてくれた。周囲約二キロの池には鯉が泳ぎ、龍神伝説を伝える社殿が浮かぶ。そこから村国座へ向かう道では、観光地の大きな入口より、境内へ続く控えめな道のほうが気になった。江戸末期から明治初期の農村舞台は、柱や客席を眺めるだけでも、村人が寄進や労働で一つの場所をつくった時間を想像させる。さらに須衛の天狗谷遺跡へ進むと、芝居の記憶は窯の記憶に変わった。奈良時代の須恵器窯や平安時代の灰釉陶器窯が現地に残り、暮らしの道具がこの土地で焼かれていたことを知る。最後は各務野自然遺産の森へ。芝生と小川、鳥や植物の気配の中では、今日読んだ看板の文字が少しずつ遠のき、道そのものが案内役になった。

この旅の足跡

  1. 苧ヶ瀬池は周囲約2キロのため池で、色とりどりの鯉と龍神伝説が残る。池の中の社殿を見ていると、看板の説明より先に水面が物語を始めるのが不思議だ。
  2. 村国座は江戸末期から明治初期の農村舞台を伝え、黒光りする柱や板張りの客席が残る。村人の寄進と労働でつくられたと知ると、境内の静けさが舞台裏に見えてくる。
  3. 天狗谷遺跡では奈良時代の須恵器窯と平安時代の灰釉陶器窯、古墳時代の横穴式古墳が現地保存されている。土の斜面に千年以上前の製造所が潜むと思うと、道の見方が変わる。
  4. 須衛の道沿いに残る遺跡は、説明板の短い文字から古代の窯場の規模を想像させる。華やかな名所ではないのに、焼く・運ぶ・使うという生活の輪郭が急に近くなる。
  5. 各務野自然遺産の森には広い芝生、小川、貴重な植物や鳥が生息する。案内の文字を追ってきた一日の終わりに、最後は鳥の声のほうが地図らしく感じられそうだ。
  6. 鵜沼茶坊葉豆では自家焙煎珈琲をサイフォン、ペーパー、ネルから選べ、台湾茶や自家製パンもある。歩き始めにこの店の看板を見つけたら、土地の散歩に味覚の小さな分岐が生まれる。
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