LoqiRoam · 旅日記
木次、川音のほうへ曲がる
古い町場から斐伊川、神話の公園、温泉、八本杉、道の駅へ。道の表情が変わるたびに寄り道した。
木次駅を出て、最初から目的地を決めすぎないことにした。八日市と三日市の通りへ入り、古い町場の角をひとつ越える。かつて市が立ったという時間は、説明板よりも、道幅と家の向きのほうに残っている気がした。そこから斐伊川堤防へ抜けると、町は急に空へひらけた。約800本の桜が並ぶ土手は、花のない季節でも川に沿う長い余白として歩ける。さらに曲がって八俣大蛇公園へ。箸拾いの碑と石像を見ていると、さっき渡ってきた川が神話の入口にも見えてくる。けれど身体は神話より正直なので、おろち湯ったり館で歩幅をほどいた。最後は八本杉まで少し遠回りした。物語を語る石像のあとに、ただ立ち続ける大杉を見ると、土地の記憶は派手な形だけでは残らないのだと思う。帰り道はさくらの里きすきへ寄り、道の駅の明るさの中で旅を閉じた。まっすぐなら見えなかった曲がり角が、今日の木次をつないでくれた。
この旅の足跡
- 八日市と三日市の通りを歩くと、木次がかつて市の立つ町だったことが少し想像できる。古い家並みの角で、今の暮らしがどう続いているのか気になった。
- 斐伊川沿いの堤防には約800本の桜が続き、日本さくら名所100選にも選ばれている。花の季節でなくても、川と土手の長い余白が町の呼吸に見えた。
- 八俣大蛇公園には、スサノオとオロチの対決を再現した石像と箸拾いの碑がある。川から箸が流れてくる場面を、今の水面に重ねてしまった。
- おろち湯ったり館は10時から21時まで営業し、石風呂や檜の木風呂などを備える。歩く旅の途中に、伝説ではなく自分の体を休ませる場所があるのが妙に現実的だ。
- 湯村温泉近くの八本杉は、ヤマタノオロチ伝説と結びつく大杉として知られる。石像のように物語を演じないのに、木そのものがいちばん古い案内役に見えた。
- さくらの里きすきは国道54号沿いにあり、ふるさと尺の内公園と一体になった道の駅。売店は9時から16時30分で、遠回りの終わりに土地の品を覗ける。