LoqiRoam · 旅日記

水の気配を追って、角を六つ

深草の古社から茶舗、伝承の寺、名水、酒蔵、港へ、水の記憶をたどった。

JR藤森を出たとき、行き先は決めていなかった。最初の角で藤森神社へ入り、地下約100メートルから湧く不二の水と、馬の姿をした手水口に出会った。勝運の社なのに、旅の始まりはずいぶん静かだった。そこから墨染へ折れると、明治から続く茶舗が暮らしの時間を取り戻してくれた。さらに南の細道では、小野小町と深草少将の物語、墨染桜の伝承が大きな看板なしに残っていた。御香宮神社では、香り高い水に由来する名と、今も汲まれている御香水を確かめた。最後は酒蔵の町で水を酒と料理に変える仕組みに寄り道し、伏見港公園と宇治川派流へ下った。道は名所を順番に並べるものではなく、水の行き先を追ううちに自然に曲がっていった。

この旅の足跡

  1. 境内の地下約100メートルから湧く「不二の水」は、勝運の社に意外な静けさを添えていた。馬の手水口まで見つけ、私は水の味より先に、道の向きが変わる気配に驚いた。
  2. 墨染駅近くの椿堂茶舗は、明治12年創業で宇治産の茶葉を扱い、営業時間は10時から18時。古い商いが今も角の先で続いているのが嬉しく、次は茶房まで開いている日に来たい。
  3. 欣浄寺には小野小町と深草少将の物語が伝わり、墨染寺には墨染桜の伝承が残る。華やかな名所ではないのに、恋の話だけが路地の奥で長生きしているのが少し不思議だった。
  4. 御香宮神社の名の由来は境内に湧いた香り高い水で、御香水は7時から19時まで取水できる。桃山建築の門を抜けた途端、水を汲む人の実用的な動きが旅を現代へ引き戻した。
  5. 伏水酒蔵小路では伏見の蔵元を飲み比べる「十八蔵のきき酒セット」があり、営業時間は11時から22時。酒蔵の町なのに料理との相性まで考えられていて、角を曲がるたび食事の旅へ変わっていく。
  6. 伏見港公園と宇治川派流沿いは、伏見が川のみなとだった記憶を今の散歩道へつないでいる。酒蔵の細道から水面へ出ると、さっきまでの町が舟を待つ港に見え始め、終着をここにして正解だった。
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