LoqiRoam · 旅日記
湯気の町で、三つだけ拾う
手仕事、湯けむり、地獄蒸しの甘味。別府の熱と静かな緑を歩いて集めた旅。
別府大学を出ると、最初に拾いたかったのは大きな名所ではなく、町の暮らしに近い手触りだった。竹細工の展示に立ち寄り、細い竹が道具や器へ変わる時間を想像する。鉄輪へ向かうと、坂道の先から湯けむりが景色を縫っていた。むし湯の石菖、海地獄の青い色と白い蒸気を順に受け止めると、地熱は目だけでなく鼻や肌でも見るものだと気づく。美術館でいったん静けさに入り、明礬では地獄蒸しプリンを味わった。熱い町の力が、最後には甘さにもなるらしい。締めくくりは別府公園の木立。今日は、手で使うもの、空気に残るもの、口に残るものを三つの小さな発見として持ち帰る。
この旅の足跡
- 坂道の途中で、別府の竹細工が日用品として息づいている気配に出会った。観光の飾りではなく、手で使うものとして残っているのが面白い。
- 鉄輪むし湯は、温泉で熱せられた床に石菖を敷く独特の仕組み。湯船とは違う香りの残り方に、温泉の使い方の奥行きを感じた。
- 海地獄は青い湯の色が印象的なのに、近づくと白い蒸気と硫黄の匂いが先に記憶に残る。色と匂いが少し食い違うのが不思議だった。
- 別府市美術館では、湯けむりの町を歩いたあとだからか、静かな展示室の余白まで旅の一部に感じた。外の熱気と中の沈黙の差がよかった。
- 明礬の岡本屋売店では、地獄蒸しプリンという名前に惹かれた。温泉の熱が景色だけでなく甘味にもつながると知り、町の味が少し立体的になった。
- 別府公園の木立では、大きな観光看板から離れて、地元の人の散歩の速度に戻れた。葉が動くたび、町の輪郭がやわらかくなる。