LoqiRoam · 旅日記

音の地図をひらく旅

西藤原から北勢を南へたどり、鉄道、旧校舎、川、庭園、萬古焼、森へと音の表情を変えていく旅。

西藤原では、出発の合図を待つあいだに列車より山の風を聞いていた。駅前の鉄道風景から阿下喜へ向かい、終着駅に隣接する博物館で、車両と線路が残す時間を眺める。桐林館では古い校舎の木の気配に耳を澄まし、員弁川散歩道では水と風に歩調を預けた。やがて六華苑の洋館、和館、庭園が、床板や砂利の違う響きで暮らしの境目を教えてくれる。旅の後半は萬古焼へ。土を焼く手仕事を想像し、器の重さを手のひらで確かめると、音は耳だけに宿るものではないと思った。最後に椿大神社の森へ入り、砂利の音が木々に吸われていくのを聞く。寄り道を重ねた先で、いちばん遠くまで届いたのは静けさだった。

この旅の足跡

  1. 西藤原駅前では、列車の到着音より先に山の風が届いた。駅前公園の鉄道らしい景色を眺めると、今日は線路そのものを耳でたどりたくなる。
  2. 阿下喜駅に隣接する軽便鉄道博物館には実物の車両と資料がある。線路の終点で、列車が去ったあとの静けさまで展示の一部に思えてきた。
  3. 桐林館は旧阿下喜小学校の校舎を活用した文化施設で、木造の気配が濃い。展示を見ていると、子どもたちの声が床板の奥にまだ眠っている気がした。
  4. 員弁川散歩道は川沿いに約2.2km続く直線的な歩道。目立つ音はないのに、水面と風の小さな変化が歩くほど近くなり、町の速度がほどけていった。
  5. 六華苑は洋館、和館、池泉回遊式庭園が一つの敷地に重なる。床板、砂利、庭の水面がそれぞれ違う響きを返し、豪華さより暮らしの境目が印象に残った。
  6. 四日市萬古焼は江戸時代中期に始まり、手捻り成形などの技が受け継がれている。器の表面を見るだけでなく、土を焼く時間を手のひらで想像したくなった。
  7. 椿大神社の参道は深い森に包まれ、砂利を踏む音が木々の間でほどよく消える。大きな社なのに急かされない静けさがあり、終着の音として残った。
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