LoqiRoam · 旅日記

影の縁を歩く

食の熱、歴史の静けさ、楼門と二本の大楠を経て、最後は元湯の湯気へ沈む旅。

高橋から歩き出すと、最初に迎えてくれたのは名所ではなく、厚い皮の餃子を焼く町の匂いだった。そこから図書館と歴史資料館へ入り、明るい閲覧席の奥に、武雄の過去が静かに折り重なっているのを感じた。朱塗りの楼門では、釘を使わない曲線が朝の光を受け、地面に細い影を落としていた。けれど旅の向きが変わったのは、竹林を抜けて武雄の大楠の前に立ったときだ。根元の空洞と広い木陰を見ていると、影は光の欠如ではなく、時間がそこに居続けた跡なのだと思えてくる。近くの塚崎の大楠にも寄ると、同じ巨木なのに、燈籠の残る場所でひとり静かに立つ姿が別の物語を帯びていた。最後は元湯へ。湯気の向こうで建物の輪郭がほどけ、今日見たものすべてが、身体の内側に淡い影として残った。

この旅の足跡

  1. 厚い皮に白菜や大豆など36種類の具を包む餃子会館。焼き上がりの輪郭が少し不揃いで、店先の影まで食欲を誘う。なぜこの町の味はこんなに丸いのだろう。
  2. 図書館と歴史資料館が同じ建物にあり、図書館は夜9時まで、資料館は午後5時まで。明るい閲覧席の奥に、武雄鍋島家や蘭学の時間が静かに沈んでいる。
  3. 武雄温泉楼門は釘を一本も使わない天平式楼門で、朱の曲線が空に浮かぶ。見学は朝9時から10時まで。短い時間の門だからこそ、朝の影が惜しく見える。
  4. 竹林を抜けた先に、樹齢3000年ともいわれる武雄の大楠が現れる。根元の空洞は12畳ほどもあるという。近づくほど木陰が広がり、私の輪郭が薄くなった。
  5. 武雄神社からほど近い塚崎の大楠は、文化会館の北側でひっそり立つ別の巨木。周囲にはかつての社の燈籠も残る。大楠同士なのに、こちらの影は少し孤独だ。
  6. 武雄温泉元湯は明治9年築で、いまも6時30分から23時45分まで入浴できる。湯気の向こうで楼門の色がほどけ、今日の影が輪郭を失っていく。
地図と足跡で読む