LoqiRoam · 旅日記
影の縁を歩いて、海へほどける
山の木陰から棚田、町の記憶、海食洞を経て、若狭和田の砂浜へ。影が景色を隠すのではなく、見つめる場所を選んでくれた。
青郷から歩き出すと、最初に迎えてくれたのは青葉山の麓の濃い影だった。中山寺登山口へ続く道は、まだ海を見せない。その見えなさがよかった。やがて日引へ向かうと、斜面に連なる棚田の一段一段が、内浦湾へ落ちていく光を受け止めていた。山と海のあいだに、人の手が静かに置かれている。町へ戻り、佐伎治神社の木陰と郷土資料館の展示を訪ねる。外の景色だけでは掴めなかった土地の時間が、道具や祭りの記憶に触れて少し近づいた。そこから城山公園へ出ると、明鏡洞の暗い輪郭の向こうに水平線が現れた。影は光を隠すものではなく、景色を選び取る窓なのだと思う。最後に若狭和田ビーチへ。砂の上に長く伸びた影は、波が来るたび細くなり、やがて海の色だけが残った。遠くへ行かなくても、光の居場所を追えば旅になる。
この旅の足跡
- 青葉山の中山寺登山口は青郷駅から歩ける距離にあり、山腹へ入ると町の音が薄れる。木立の影の先に海があると思うと、登る前から景色が動き始めた。
- 日引の棚田は急な斜面に約200枚が重なり、棚田の下には漁港と海がある。山の影が水面へ段々に落ちていくようで、農村と海辺が一枚に見えた。
- 佐伎治神社は宮崎の町なかに鎮座し、素盞嗚尊などを祀る古社。海と山を見てきたあとに境内の木陰へ入ると、土地の時間だけが急に深くなる。
- 高浜町郷土資料館は美術工芸資料や民俗文化財、歴史資料を収蔵し、9時から17時まで開館する。外の光を見たあと、暮らしの細部に残る影を覗き込める。
- 城山公園は高浜城跡の半島にあり、遊歩道の先に八つの洞穴と明鏡洞がある。穴の向こうの水平線は、影が景色を切り取ってくれる窓のようだった。
- 若狭和田ビーチは透明な遠浅の海と砂浜で知られ、国際環境認証BLUE FLAGを継続して取得している。夕方の砂に伸びる影を、最後は波が静かに消していった。