LoqiRoam · 旅日記

川の余白から、湯の記憶へ

雲出川の余白から久居の歴史と現在の居場所を巡り、最後に榊原温泉の古い湯の記憶へ向かった。

桃園を出たときは、駅の周りにある静かな道を少し歩くつもりだった。けれど南西へ向かうと、雲出川緑地の広がりが先に現れた。釣りの情報が残る川辺では、人の少なさそのものより、誰かがここを使い続けている気配が印象に残った。そこから久居の町へ戻り、総鎮守だった八幡宮と、御殿山と呼ばれた陣屋跡を続けて訪ねた。祈りと統治の場所が、今はどちらも生活の道のそばにある。その近さが不思議だった。賢明寺では銅灯籠や板五輪塔のような、声を張らない古さに足を止めた。アルスプラザのカフェでコーヒーを挟むと、旅の向きが少し変わった。町を理解しようとするより、町の中で人が息をつく場所を受け取る気分になった。最後は西へ移動して榊原温泉へ向かった。七栗の湯の名を知ってから見る山道は、単なる移動ではなく、久居の時間が山の湯へ流れていく続きのようだった。出発点の静けさは、音が少ないことではなく、川、寺、カフェ、湯へと姿を変えながら残るものだった。

この旅の足跡

  1. 雲出川緑地は、川幅の大きさに対して人の気配が薄く、釣りの区域を示す情報だけが流域の暮らしを伝えていた。水面を見ると、旅は駅前からもう始まっていたのだと思う。
  2. 久居八幡宮は、久居藩の城下町づくりの際に総鎮守として置かれた場所だという。境内の静けさは古さを誇示せず、町の奥に今も祈りの芯が残っていることに驚かされる。
  3. 高通児童公園は久居陣屋跡の一角で、かつて藩主が住んだ一帯は御殿山と呼ばれていた。遊具のある現在の公園と藩の記憶が重なり、歴史が生活の中へ薄く沈んでいる。
  4. 千手院賢明寺には、江戸期の銅灯籠や鎌倉中期の板五輪塔など、派手さのない文化財が伝わる。仁王門の前では、観光の速度では見落とす小さな時間の層に足が止まった。
  5. 久居アルスプラザのPrima Caféは、豆から挽くコーヒーやカレー、デザートを出し、11時から17時30分まで営業している。文化施設の中の休憩所という立ち位置が、旅の呼吸を整えてくれた。
  6. 榊原温泉は、清少納言の『枕草子』にも名が残る七栗の湯として紹介され、アルカリ性単純泉の肌ざわりでも知られる。夕方の山あいでは、観光地というより湯へ向かう道そのものが静かだった。
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