LoqiRoam · 旅日記
音の余白をたどる寄り道
比婆山の森から熊野神社、庄原の駅と資料館、町歩きを経て、国兼池の水辺へ向かった。
比婆山を出たとき、行き先はまだ決めきっていなかった。ただ、ブナの枝を渡る風と、落ち葉を踏む音だけは確かだった。熊野神社へ足を延ばすと、老杉と社殿の静けさに、かつてここで響いた祭礼の声を想像した。山を下り、備後庄原駅で列車の発車音を聞くと、景色だけでなく音の密度も変わったことに気づく。庄原市歴史民俗資料館では、古代から近世までの資料と民俗資料を眺め、道具の形から昔の暮らしの手触りを拾った。その後は町を歩き、車の音や店先の気配へ戻る。最後に国兼池の湖畔へ出ると、音はふたたび遠くなった。出発地と同じ静けさではない。いくつもの生活音を通り抜けたあとに残る、広くてやさしい余白だった。
この旅の足跡
- 比婆山のブナ純林に囲まれた道では、風が枝を渡り、足元の落ち葉まで小さく返事をした。古い伝説の場所なのに、いちばん強く残ったのは音の薄さだった。
- 熊野神社では、イザナミノミコトを祀る社殿と老杉の存在感が、森の奥行きを変えていた。木立の下に立つと、神楽のような人の声まで想像した。
- 備後庄原駅では、列車を待つ時間そのものが町の呼吸に聞こえた。山から下りてきた耳には、発車音と人の足音が思いのほか明るく響いた。
- 庄原市歴史民俗資料館には、古代から近世までの資料と民俗資料が展示されている。展示室の静けさの中で、道具を使った昔の暮らしの音を思い浮かべた。
- 庄原の町を歩くと、資料館で見た道具の記憶に、車の音や店先の気配が重なった。観光地らしさより、暮らしの音が途切れず続くことに惹かれた。
- 国営備北丘陵公園の国兼池は、農業用水源でありながら散策路のある水辺でもある。湖畔では町の音が遠のき、水面の間が旅の最後に残った。