LoqiRoam · 旅日記
海と山のあいだで、角を六つ
吹浦から信仰、旧家、岩礁、湧水、遠望、温泉へ。海と山のあいだを、気ままな曲がり角でつないだ。
吹浦駅を出たとき、目的地を急いで決める気になれなかった。海から来る風に押されるように歩き、まず鳥海山大物忌神社吹浦口ノ宮へ向かう。海辺の平地に立つ境内には、水平線だけでなく背後の山の時間も流れていた。次に旧青山本邸へ入ると、外の広がりが消え、明治の家に残る暮らしの細部が目に入る。そこから十六羅漢岩へ出て、石仏と波の境目を見失った。さらに釜磯海岸では砂浜から冷たい伏流水が湧き、海を歩いていたはずなのに山の水を踏んでいるような感覚になる。最後は海辺の温泉へ。曲がり角を選び続けた一日は、湯気の中でようやく静かにほどけた。
この旅の足跡
- 鳥海山大物忌神社吹浦口ノ宮は、海に近い平地にありながら鳥海山の信仰を背負っている。鳥居の先で水平線と山の気配が重なるのが不思議だ。
- 旧青山本邸は、北海道の漁業で財を成した青山留吉が故郷に建てた邸宅で、明治の建築様式を残す重要文化財。栄華より、部屋の奥の静けさが残った。
- 十六羅漢岩は、日本海の岩礁に石仏が刻まれた場所。遠くでは岩にしか見えず、近づくほど仏の輪郭が波の中から現れる。
- 釜磯海岸では、砂浜から鳥海山の伏流水が湧く。海のすぐそばで足元から冷たい淡水が出てくるので、景色の向きが一度わからなくなる。
- 吹浦地区の散策案内では、釜磯海水浴場に砂浜から多量の湧水があると紹介されている。海岸線を歩いているのに、山の水脈に触れる感じがした。
- 湯ノ田温泉のあぽん西浜は、海辺の散策後に立ち寄れる日帰り温泉。塩気のある風のあとに湯へ沈むと、曲がり角まで丸くなる。