LoqiRoam · 旅日記
看板の先で、町の速度に追いつく
総社宮から古い通り、郷土館、珈琲店、吉備路の古代遺跡と五重塔まで、看板と小道を手がかりに歩いた。
東総社を出たとき、駅前だけを見て帰るつもりはなかった。まず総社宮へ歩くと、地名の由来になった社の回廊が水面に影を落としていた。絵馬や案内を眺めているうち、便利さのために集められた祈りが、今も町の中心に静かに残っていることに気づく。そこから少し内側の通りへ入り、古い家並みと小さな看板を拾った。まちかど郷土館では、旧警察署の洋風建築と地域産業の資料が、さっきの通りを別の角度から説明してくれた。吉備路へ移る前に珈琲でひと息つき、今度は田園の小道へ。尼寺跡の築地や礎石を見てから五重塔へ向かうと、見えない古代と残された江戸の塔が同じ風景に重なった。今日は名所を集めたというより、看板、資料、礎石、遠景の順に町の読み方を変えていった散歩だった。
この旅の足跡
- 回廊が水面に影を落とす総社宮は、備中の324社を合祀した社だという。絵馬の多さに足が止まり、便利さから生まれた祈りが今も賑わっているのが不思議だった。
- 古い家並みの前に、手描きらしい小さな案内や店の看板が残っていた。大通りより一歩内側へ入るだけで、総社が門前町と街道の町だった気配が濃くなる。
- 明治43年の旧総社警察署を使ったまちかど郷土館は、市内で現存する唯一の明治洋風建築。備中売薬や阿曽の鋳物の資料を見て、町の看板の背後に産業が見えた。
- まほろば珈琲店は吉備路の五重塔や季節の自然を意識した店で、全席ソファー。歩きの途中に座ると、観光の情報より先に、町へ来た身体の疲れがほどけていった。
- 築地と礎石が残る備中国分尼寺跡は、全国でも珍しく岡山県内唯一の国史跡指定。平安時代の塔跡が判明したと知り、見えない建物を小道の上に重ねて歩いた。
- 田園の中に立つ備中国分寺五重塔は高さ約34.3m、岡山県内唯一の五重塔。初層の天井には花鳥や天女の彩色画があると知り、遠くからでも細部を想像できた。