LoqiRoam · 旅日記

庇の影から湖のひかりへ

鳥居本の木造駅舎と宿場から摺針峠、佐和山、彦根城下へ。建物と山の影が庭園の水面と町の光へ変わる旅。

鳥居本では、駅を出た瞬間から旅が始まるのではなく、昭和初期の木造駅舎がつくる古い輪郭の中へ静かに入っていった。旧中山道の宿場では、かつて旅籠が連なった道幅と、格子や庇の細い影を眺めた。やがて摺針峠へ向かう坂で、街道の水平な暗がりは竹林と石の斜面へ変わる。望湖堂の跡から湖を望み、さらに佐和山城跡では、残された看板の少なさから消えた城の大きさを想像した。彦根城では現存する天守と石垣に触れ、玄宮園の池がその重さを水面へほどいてくれた。最後に夢京橋の白壁と黒格子を歩くと、歴史は遠い展示ではなく、店先の庇と人の足音の間にまだ暮らしていた。影を集めたはずなのに、終着で残ったのは静かな明るさだった。

この旅の足跡

  1. 昭和6年開業の木造駅舎は、腰折れ屋根と半円窓を持つ登録有形文化財。ホームの影まで洋風の輪郭を帯びていて、旅の入口が少し意外だった。
  2. 鳥居本宿は中山道六十九次の63番目で、かつて旅籠35軒が並んだ。狭い街道に格子や軒の影が続き、数字よりも道幅が往時を語っていた。
  3. 摺針峠の望湖堂は焼失したが、峠から琵琶湖を望む景色は残る。広がる湖を期待して登ったのに、竹林の濃い影が先に心へ入ってきた。
  4. 佐和山城跡は山頂までのハイキングコースが整備され、彦根城や琵琶湖を一望できる。残る看板の少なさが、消えた城の輪郭をかえって濃くした。
  5. 彦根城は国宝天守と内堀・中堀が残る保存状態のよい城跡。白壁の華やかさを見に来たのに、石垣の隙間に落ちる影のほうが長く残った。
  6. 玄宮園は彦根城北側の池泉回遊式庭園で、開園は8時30分から17時。池に映る天守を追っていたら、木陰の揺れが景色を先に変えていった。
  7. 夢京橋キャッスルロードは白壁と黒格子の建物が並ぶ商いの通り。店先の庇が光を細かく切り分け、再現された町に今の歩く音が重なっていた。
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