LoqiRoam · 旅日記
湯けむりまで、角を六つ
桑折の歴史建築から国見の食、飯坂温泉の旧家と共同浴場、社、花木農家の山へ。道の曲がり角ごとに土地の時間を切り替えた。
出発点からいきなり有名な場所へ向かわず、まず桑折の旧伊達郡役所へ寄った。明治の擬洋風建築は、町の中で少しだけ時間の向きを変えている。そこから道の駅へ移ると、歴史の静けさが桃や食事の明るさに押し戻され、旅が現在へ戻ってきた。西へ進んだ飯坂では、旧堀切邸の十間蔵を見て、豪農の家の厚みを感じる。そのすぐ近くの鯖湖湯では、観光地の顔より生活の湯に近い熱さに驚いた。さらに寺社の参道で歩幅を落とし、最後は花見山へ。花だけでなく、花木農家の山と小川と集落が景色を作っている。名所を集めたというより、曲がるたびに土地の別の声へ移っていく旅だった。
この旅の足跡
- 桑折の角を曲がると、洋風なのにどこか和風の旧伊達郡役所が現れた。明治16年の建物が町の真ん中でまだ現役の顔をしていて、正門が工事中なのも少し意外だった。
- 桃の郷を名乗る町の道の駅は、売り場だけでなく食事と休憩の場までひと続き。果物の土地らしい明るさがあり、さっきの役所の静けさから急に季節へ引っぱられた感じがした。
- 坂道の先で飯坂温泉の路地がほどける。旧堀切邸には1775年築の十間蔵が残り、豪農の家が観光交流拠点になっているのに、庭先には今の町の気配もある。古さが止まっていない。
- 鯖湖湯は、名前から想像するよりずっと生活に近い。木造共同浴場の姿を再現した建物で、観光のための湯なのか地元の湯なのか、その境目が少し曖昧なところに惹かれた。熱めの湯にも覚悟がいる。
- 西根神社・高畑天満宮は、飯坂の湯けむりから少し離れて参道の空気を変えてくれる。京都の北野天満宮から勧請された由緒を知ると、曲がり角の先の小さな社にも遠い土地との線が見えてくる。
- 花見山は単独の名所というより、花木農家の山々と小川と集落が重なった景色だった。花の季節でなくても、誰かが長い時間をかけて育てた斜面だと思うと、終着点が少しやわらかくなる。