LoqiRoam · 旅日記
影の向きを追って
豊春から古隅田川、池、神社を経て岩槻へ。水面・樹木・人形・鐘の影をつなぐ小旅行。
豊春を出たとき、旅の目印は駅前の案内ではなく、道端の塀に落ちた細い影だった。古隅田川のやじま橋で、生活の道に古い時間が沈んでいることを知り、内牧公園では蓮池やトンボ池の水面へ視線をほどいた。大銀杏のある春日部八幡神社では、枝葉の影が参道を静かに揺らしていた。大池親水公園で空を映す水を眺めたあと、電車で岩槻へ向かった。人形の表情を見つめるはずの博物館で、私はむしろ背後に生まれる暗がりを想像し、最後に時の鐘のそばで立ち止まった。鳴る時刻を知っている鐘は、鳴らない瞬間にも町の歩幅を決めている。帰り道、豊春で見た最初の影が、少し遠い場所からこちらを見返している気がした。
この旅の足跡
- やじま橋は、古隅田川に架かる石橋だという。水の流れより、橋の影のほうが長く見えたのが意外で、昔の道は今も同じ向きなのか気になった。
- 内牧公園には蓮池やトンボ池、菖蒲田がある。遊具のある公園なのに、水面へ落ちる木立の影は驚くほど静かで、鳥はどの季節に一番近くへ来るのだろう。
- 春日部八幡神社には鎌倉時代ゆかりの由緒と大銀杏がある。参道の中央で枝葉の影が揺れ、古い樹が境内の時間をまだ握っているように感じた。
- 大池親水公園は木々に囲まれた大きな池で、渡り鳥が来ることもある。水面の反射が雲を一度消してしまい、眺める側の影だけが残るのが不思議だった。
- 岩槻人形博物館は人形と人形文化を扱い、午前9時から午後5時まで開館している。展示室の静けさを想像すると、顔の表情より背後の影を見たくなった。
- 岩槻の時の鐘は江戸時代から時を知らせ、6時・正午・18時に鳴る。音のない時間にも、鐘楼の影だけが先に夕方を告げているようだった。