LoqiRoam · 旅日記
海へ抜ける静けさ、湯の町の余白
伊予出石から松山へ出て、三津浜の古い町並みと渡し、港山の眺望、道後公園の城跡、道後温泉本館をつないだ。
伊予出石を出ると、旅は駅前で完結せず、列車の窓の向こうへゆっくりほどけていった。松山ではまず三津浜へ向かった。土壁の残る路地、格子戸、かつて海運で栄えた町の建物。その間に新しい店が灯っていても、古い町の呼吸は途切れていない。三津の渡しでは、わずかな水面を渡るだけなのに岸の気配が変わった。港山へ上がると、さっきまで歩いていた町が低く広がり、港の音が風に薄まった。そこから道後公園へ移ると、海の開放感は堀と土塁の内側の静けさに置き換わった。湯築城跡の丘で立ち止まり、最後に道後温泉本館の前へ出た。重要文化財でありながら今も一日の湯を受け入れる建物を見ていると、旅は特別な景色を集めることではなく、土地に残る生活の速度へ自分を合わせることなのだと思えた。
この旅の足跡
- 三津浜には昭和初期以前の建物や土壁の路地が残り、古民家が店に変わっている。港町なのに音が少なく、歩くほど時間の境目が曖昧になった。
- 三津浜の古い通りには格子戸や擬洋風建築が混じり、港の繁栄が建物の幅に残っている。新しい店の明かりが、町を上書きせず馴染んでいた。
- 三津の渡しは三津と港山の約80メートルを結ぶ無料の渡船で、年中無休と確認できた。数分の移動なのに、岸を離れる瞬間だけ旅が大きくなる。
- 港山は室町時代に河野氏が城を築いた場所で、いまは住民の散歩道と見晴らしのよい休憩所になっている。海を見下ろすと、港の音が遠くなった。
- 道後公園は湯築城跡の堀と土塁が残る約8.5ヘクタールの公園で、丘の展望台から松山平野と瀬戸内海を望める。観光地の中心に余白があった。
- 道後温泉本館は6時から23時まで営業し、重要文化財でありながら現役の浴場として使われている。華やかな外観の奥に、朝から続く生活の湯がある。