LoqiRoam · 旅日記
不動前から、曲がり角の先へ
目黒不動尊の水音と歴史を起点に、かむろ坂、武蔵小山の商店街、林試の森の巨木と水辺を歩いた。
不動前では、駅を目的地にしないことだけ決めて歩き始めた。最初の角で目黒不動尊の境内に入り、独鈷の滝の水音に足を止める。さらに墓地へ回ると、甘藷の普及に尽くした青木昆陽の墓があり、寺の奥には食べ物と飢饉の記憶まで残っていた。そこからかむろ坂へ向かう。桜並木で知られる坂は、花がなくても傾斜そのものが景色を作る。坂を越えると武蔵小山のパルム商店街。屋根の下に店が連なり、歩く人の速度も声の密度も一気に変わった。けれど最後は、その賑わいから少し外れて林試の森公園へ。大きなクスノキと水辺の静けさの前では、最初に考えた経路などどうでもよくなる。知らない街では、名所より手前の角が旅の向きを決めるらしい。
この旅の足跡
- 目黒不動尊の独鈷の滝は、二条の清水が竜口から注ぎ、今も水が枯れないという。街の中なのに水音だけが別の時間を作っていて、最初の角で旅の速度が変わった。
- 瀧泉寺の墓地には、甘藷の普及に尽くした青木昆陽の墓がある。サツマイモの話が寺の奥に眠っているのは意外で、参拝だけでは見落とす街の記憶に少し立ち止まった。
- かむろ坂通りは約600メートル続く坂道で、桜並木の密度が高いことで知られる。花の季節ではなくても、上り下りの傾斜が街の地形をそのまま見せてくれて、景色が少し身体に近い。
- 武蔵小山のパルムはアーケードだけで約800メートル、店舗はおよそ230〜250軒ある。歩行者専用の屋根の下で店の気配が連続し、さっきの坂とは別の曲がり角の賑わいが始まった。
- 林試の森公園は、かつて林業試験場だった場所を生かした細長い森で、芝生広場には大きなクスノキが立つ。都心の公園なのに樹木の履歴が濃く、緑というより古い研究室に迷い込んだ感じがした。
- 林試の森公園には上池と下池、それらを結ぶ小水路があり、ラクウショウの森を背景に水辺の眺めが広がる。木陰で立ち止まると、曲がり角を選んできたことさえ遠く感じた。