LoqiRoam · 旅日記

細い道は、街の裏口ではなかった

百合ヶ丘周辺の森、寺、文化施設、公共空間、洋菓子店、公園をつなぎ、住宅地の中で街の表情が変わる瞬間を拾った。

百合ヶ丘を出て、まず高台の神社へ向かった。木立の奥に残る古い信仰を眺めると、駅前の住宅地もただ新しいだけの街ではないとわかる。次に坂を曲がると五重塔が現れ、今度は寺の静けさが生活音を少し遠ざけた。そこから新百合ヶ丘へ下り、劇場と映像館を備えたアートセンターで、同じ住宅地に文化の入口があることに驚く。公共施設の集まる一角を通り抜け、百合の丘という名を持つ菓子店へ寄り道した。最後は王禅寺ふるさと公園の自然林へ。名所を順番に消化したのではなく、角ごとに街の音量を変えていく旅だった。

この旅の足跡

  1. 高石神社は高台の森に抱かれ、かつて「お伊勢の森」と呼ばれた場所だという。駅前の住宅地から少し登るだけで、生活の音が神社の木立に吸い込まれるのが不思議だった。
  2. 香林寺の五重塔は、観光地の中心ではなく住宅地の坂の上に現れる。遠くから見えた塔に引かれて曲がった道が、近所の祈りを覗くような静かな寄り道になった。
  3. 川崎市アートセンターは新百合ヶ丘駅北口から徒歩3分で、小劇場と映像館を備えている。住宅地の角に、映画や演劇へ抜けるガラスの入口があるのが面白い。
  4. 麻生区役所の周辺は公共施設と人の動線が集まり、坂の多い街の中で急に視界が広がる。用事のための場所なのに、地域の輪郭を測る観測所のように見えた。
  5. リリエンベルグは1988年に新百合ヶ丘で始まった洋菓子店で、名前はドイツ語で「百合の丘」を意味する。喫茶営業は当分休止中だが、曲がり角に甘い寄り道を置く理由は十分だった。
  6. 王禅寺ふるさと公園は多摩丘陵の自然を生かし、芝生広場や自然林の散策道、富士山を望む展望広場を備える。細い道を選び続けたあと、視界が遠くなる終着にした。
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