LoqiRoam · 旅日記
海へ出て、一本裏へ
駅弁の記憶から宮島口の商店街へ進み、表参道を横切って町家通り、大聖院、紅葉谷公園へ抜ける旅。
前空を出ると、最初から遠くへ行く必要はないような気がした。まず宮島口の老舗で、明治の駅弁から続く穴子飯を受け取る。食べ物は地図より正直だ。そこから約二百メートルの商店街を歩くと、フェリーへ急ぐ人の列と、カフェや地場の品を眺める人の流れが交差していた。海を渡ったあとは、表参道の華やかさを少しだけ浴びる。けれど、にぎわいを正面から受け続けるのは性に合わない。一本山側へ曲がると、町家通りの古い建物に現代の店が入り込み、島の時間が急に薄暗くなる。さらに坂を上がって大聖院へ向かうと、三鬼神の話と静かな斜面が、旅の向きを内側へ変えた。最後は紅葉谷公園へ下りた。川と木陰の気配が、観光の名前をゆっくり洗い流してくれる。帰りの船を急いで決めず、今日は曲がった回数だけを土産にする。
この旅の足跡
- 創業明治三十四年の店で、駅弁から始まった穴子飯を選ぶ。行列の気配まで名物らしく、朝の旅に少し贅沢な重さが加わった。
- 宮島口商店街は駅からフェリー乗り場まで約200メートル。通過点のはずの道にカフェや地場の品が増え、急ぐ人の脇で町が立ち止まっているのが面白い。
- 表参道には80店以上が並び、牡蠣や穴子、もみじ饅頭まで一気に現れる。華やかすぎるので、私は人波の端の小さな曲がり角を探した。
- 町家通りは表参道より山側に一本入り、江戸期の町家を改装した店やギャラリーが続く。観光地の背中に、別の時間が薄く残っていた。
- 大聖院では全国唯一という三鬼神が祀られている。坂を上がるほど店の呼び声が遠のき、寺の斜面だけが旅を内側へ引っぱった。
- 紅葉谷公園は川沿いの木陰と山の気配が近く、過去の土石流の記憶も抱えている。華やかな島の最後に、少し湿った静けさを選んだ。