LoqiRoam · 旅日記

水音の向こうへ

猿田の森と古墳から佐原の水辺へ移り、水音、測量、古い建物の再利用をたどった。

猿田駅を出ると、最初に向かった猿田神社の森は、社殿の由緒よりも先に木の大きさでこちらを黙らせた。県の天然記念物になっているスダジイの下では、道が細くなるほど自分の足音だけがはっきりする。そこから野尻古墳群へ寄り道すると、信仰の場とは違う、輪郭の薄い古さが畑の向こうに残っていた。駅へ戻り、今度は列車で佐原へ移動した。小野川沿いの町並みに入る前に樋橋へ立つと、農業用水のための大樋が、いまも決まった間隔で水を落としている。音を待つ時間が、町を急いで見て回る気持ちをほどいてくれた。伊能忠敬記念館では、歩いてきた道が測量の線として見え直した。最後に川沿いの文化財カフェでサツマイモの甘味を口にすると、古い建物は保存されるだけでなく、現在の休息を受け入れているのだとわかった。森から古墳、水路、地図、甘味へ。旅の終わりに残ったのは、にぎわいではなく、音が止んだあとにも続く土地の気配だった。

この旅の足跡

  1. 森の奥に入ると、807年創建で1574年に再建された社殿より先に、県天然記念物のスダジイの大きさが目に入った。祈願の場なのに、最初に残ったのは葉擦れの音だった。
  2. 野尻古墳群1号墳は銚子市の史跡として記録されている。案内の少ない場所で、観光地らしい声より畑の向こうの空白が先に来る。ここに残ったものの小ささが、かえって気になった。
  3. 佐原の小野川沿いには町屋や土蔵が連なり、古い水運の町の輪郭が残っている。駅から歩くほど観光地の入口が少しずつ近づき、生活の道が町並みに変わる境目が面白かった。
  4. 樋橋はもともと農業用水を渡す大樋で、今は30分ごとに小野川へ水を落とす。見た瞬間より、落水が止んだあとの川面の静けさに驚いた。橋は通路であり、水の装置でもある。
  5. 伊能忠敬記念館は午前9時から午後4時30分まで開館し、見学の目安は20〜30分。地図を眺めると、さっき歩いた道も急に測れるものへ変わり、旅の距離が別の尺度になった。
  6. 1855年築の県指定文化財を使うVMG CAFEでは、小野川を眺めながら地元のサツマイモのモンブランを味わえる。古い金庫や箱階段の残る部屋で甘味を食べると、保存された時間が急に手触りを持った。
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