LoqiRoam · 旅日記
反射の間隔を変える日
古墳と神社の影から車窓、市街の堀、美術館、運河へ移り、富山の光が変わる間隔を歩いて確かめた。
稚子塚を出たとき、光は田の端と古墳の斜面だけを薄く拾っていた。稚児塚古墳では、周濠の形を残す田と大杉の根を見た。朝は歴史を説明するものではなく、土の上に長く置かれた影として現れる。雄山神社前立社壇へ移ると、木立の暗さの中に檜皮葺きの屋根が浮いた。古い建物は明るく見せるより、暗がりを抱えている方が輪郭を持つ。そこから電車で富山市街へ向かった。車窓の屋根と田の反射が、歩くときとは違う間隔で流れた。富山城址公園では堀が空を映し、富山県美術館では建築そのものが水辺と山を取り込んでいた。最後に環水公園へ下り、天門橋の上から運河を見渡す。朝の田と夕方の水面は別の場所なのに、どちらも光を一度受け止めてから返していた。
この旅の足跡
- 稚児塚古墳は直径約50メートルの円墳で、周囲には周濠の形を残す田が広がる。大杉の根を見上げると、朝の光だけが古さを静かに強調していた。
- 雄山神社前立社壇の本殿は室町時代中期の建築とされ、北陸最大級の神社本殿だという。檜皮葺きの曲線は、木立の暗さの中で輪郭だけが明るい。
- 富山城址公園では、堀が天守より先に空を映していた。石垣の硬さと水面の揺れが同じ画面に入り、歴史が固定されたものではないと気づく。
- 富山県美術館は環水公園に向かって開かれ、屋上庭園からは市街地と立山連峰を望める。展示室の静けさを出たあと、空の広さが急に作品の続きに見えた。
- 富岩運河環水公園は、かつての運河を生かした9.7ヘクタールの親水公園。芝生と水辺の境目を歩くと、都市の音が少し遠のき、午後の光が長く残った。
- 天門橋の展望塔からは公園全体を見渡せ、晴れた日は立山連峰も望める。夕方の水面に橋の線が細く重なり、朝の田とは違う反射が残った。