LoqiRoam · 旅日記
木陰の先で、浦和宿から別所沼へ
浦和宿の市場跡から社寺と公園を経て、別所沼の小さな家へ歩いた記録。
浦和駅を出ると、まず旧中山道の大きな流れではなく、慈恵稲荷神社の脇に残る市場の定杭を探した。二と七の日に人が集まった場所は、いまは車の音のそばで静かに立っている。そこから調神社へ向かうと、鳥居のない入口と兎の像が迎えてくれた。形式が少し違うだけで、街の歩き方まで変わる。玉蔵院では江戸後期の山門を眺め、境内の奥で時間がゆっくりになるのを待った。次に北浦和公園へ出ると、寺の沈黙は彫刻と噴水のある開けた景色へ移った。さらに南西へ歩くと、住宅地の先に別所沼が現れた。メタセコイアとラクウショウの影、水面を横切る鳥、遠くの走る人。最後に見つけたヒアシンスハウスは、広い公園の片隅に置かれた小さな住まいだった。旅の終わりに残ったのは名所の数ではなく、街道、木立、作品、水辺、そして一人分の大きさの建物が順番に静けさを受け渡していく感覚だった。
この旅の足跡
- 旧中山道沿いの小さな慈恵稲荷神社には、浦和宿で二と七の日に開かれた市場の定杭が残る。大通りの車音の横で、商いの記憶だけが細く立っているのが意外だった。
- 調神社は鳥居を置かないことで知られ、境内には兎の像や木立がある。入口の形式が一つ欠けているのに、むしろ奥へ招かれる感じがあり、境内の静けさが印象に残った。
- 玉蔵院の山門は江戸後期の四脚門で、境内には樹齢百年以上のしだれ桜もある。桜の季節でなくても、門の向こうに街の音が薄まる境目が見えた。
- 北浦和公園と県立近代美術館では、屋外彫刻と音楽噴水の案内があり、緑の中に作品が点在する。寺の沈黙のあとに、風景そのものが展示室のように見えてきた。
- 別所沼公園はメタセコイアやラクウショウに囲まれ、沼にはカモや鯉がいる。浦和駅から歩ける距離なのに、住宅地の先で森と水が急に現れる。その落差に驚いた。
- 別所沼の一隅にあるヒアシンスハウスは、立原道造が構想した五坪に満たない小住宅をもとに実現した。大きな公園の端に小さな建物が残ることで、静けさが広さでは決まらないと感じた。