LoqiRoam · 旅日記
まっすぐ行かない午後
商店街、暗渠の道、神社、手仕事の場、元銭湯のギャラリー、霊園をつなぎ、谷根千の生活と歴史の重なりを歩いた。
千駄木から出て、まず谷中銀座の短い通りに吸い込まれた。魚屋、菓子屋、惣菜の店が並び、観光の顔をしているのに、店先には毎日の買い物の速度が残っている。夕やけだんだんを降りたあと、予定していた道をやめて、へび道へ。藍染川の暗渠だと知ると、曲がりくねった道路が急に昔話のように見えた。根津神社では朱色の門とつつじの斜面を眺め、低い住宅地から広い境内へ抜ける落差に驚く。上野桜木あたりでひと休みし、古い家の気配を残す場所で、手仕事の話を聞けそうな余白を味わった。その後、元銭湯のギャラリーへ寄ると、建物の記憶と現代美術が意外なほど自然に重なっていた。最後は谷中霊園のさくら通り。人の声が薄れ、墓石の間から空が広がる。今日は目的地を追ったというより、曲がった道に次の気分を預けた一日だった。
この旅の足跡
- 170メートルほどの短い通りに魚・肉・菓子の個人商店が連なり、夕やけだんだんへ続く。賑やかなのに、どの店先も暮らしの続きに見えるのが不思議だった。
- 坂道の下に商店街が折り重なり、夕やけだんだんは谷中の景色を一段高く見せる。夕日がなくても、階段の先に何かありそうで降りてしまう。
- へび道は藍染川の暗渠で、文京区と谷中の境を蛇行する道路。なぜこんなに曲がるのかを知ると、住宅の塀まで道の記憶を抱えているように見えた。
- 根津神社は約1900年前の創建と伝わり、境内には朱色の門とつつじの斜面がある。路地の低い屋根から急に空が開ける感じに、少し驚いた。
- 昭和の住まいの風情を残す複数の店が、交代で店番をする上野桜木あたり。作り手と話せる場所なのに、何を買うか決めずに入るのがいちばん似合う。
- 元銭湯の柏湯跡にあるギャラリーは、12時から18時、日月祝休み。湯気の記憶を残した建物で現代美術を見ると、壁のほうが作品を見ている気がした。
- 谷中霊園の中央園路は通称さくら通り。約10ヘクタールの静かな園内からは、場所によってスカイツリーも望める。賑わいの後ほど空の広さが身にしみた。