LoqiRoam · 旅日記

曲がり角の先で、水の履歴を読む

蔵、神社、博物館、美術館、公園、わさび田を、水路の記憶でつないだ旅。

南豊科では、まず大通りを急がず、蔵のカフェへ向かう細い道を選んだ。11時半から開く店の静かな佇まいに、旅の速度を落とされる。そこから本村神社へ曲がると、豊科の市街は急に音を失い、観光地ではない場所にも土地の芯があると気づいた。郷土博物館の絵地図で安曇野を南から見直したあと、美術館では高田博厚の彫刻と宮芳平の絵画に触れ、記録される土地と、感じ取られる土地の違いを考えた。けれど最後に勝ったのは展示室ではなく、南部総合公園の北側を流れる拾ケ堰だった。細い水の線を追っているうち、せっかく来たのだから水源の気配まで見たいという、少し無謀な気分になる。公共交通で大王わさび農場へ移動すると、蓼川の水車小屋とわさび田が待っていた。出発点の近くで選んだ小さな角が、最後には湧水と農の風景へつながっていた。地図は道順を示すものだと思っていたが、今日はむしろ、曲がる理由を後から作ってくれた。

この旅の足跡

  1. 古い蔵を改装した清雅は、南豊科駅から少し歩いた先で11時半から開く。木の温もりと季節の器に惹かれたが、昼前の路地はまだ眠っていた。
  2. 豊科字西原に鎮座する本村神社は、観光施設の派手さとは無縁の場所だった。鳥居をくぐると、さっきまでの市街の音が一段薄くなり、なぜここだけ時間が違うのか気になった。
  3. 豊科郷土博物館は豊科の歴史を扱い、開館は9時から17時、月曜休館。入口の絵地図で安曇野を南から眺めると、歩いてきた道まで急に地形の一部に見えてきた。
  4. 安曇野市美術館は高田博厚の彫刻と宮芳平の絵画を収蔵し、庭には四季咲きのバラ園もある。館内の硬い輪郭から庭へ出ると、山の方角だけが妙に柔らかく見えた。
  5. 豊科南部総合公園には広い芝生、桜並木、夏に動く噴水、そして北側を流れる拾ケ堰がある。立派な施設を横目に水の細い線を追うと、結局そこが一番歩きたくなった。
  6. 大王わさび農場は北アルプスの湧水を使う大規模なわさび田で、蓼川には水車小屋がある。3月から11月は朝8時から開くので、終着を夕方にせず水の音へ預けることにした。
地図と足跡で読む