LoqiRoam · 旅日記
冷気のあとで、町の角へ
風穴と湿原から大館市街へ入り、秋田犬、曲げわっぱ、城跡、純喫茶をつないだ寄り道の旅。
陣場から始めて、最初に選んだのは人の多い方向ではなく、岩の隙間から冷気がこぼれる長走風穴だった。夏の空気の中に、そこだけ別の季節が残っている。芝谷地湿原では木道をゆっくり歩き、湿気とトンボの気配に包まれた。そこから大館の市街へ下り、秋田犬の里のテラスで屋根の連なりを眺める。犬の町だと思って来たのに、次に気になったのは杉の木目だった。曲げわっぱの工房で、見学するだけの文化と手を動かす文化の差を感じ、最後は桂城公園の高台へ。城跡から町を見下ろすと、今日選んだ曲がり角が一本の線ではなく、いくつもの迷いの跡に見えた。締めくくりは喫茶蒼苑。古い店内でコーヒーの音を聞きながら、正解の道より、少し気になった道を選んだ旅のほうが記憶に残るのだと思った。
この旅の足跡
- 岩の隙間から冷気が出る長走風穴。夏なのに足元だけ季節が違い、山が隠していた冷蔵庫を覗いたようで少し可笑しい。
- 芝谷地湿原は一周30〜40分の木道で、モウセンゴケやトンボも見られる。日陰の少ないデッキを歩くと、静けさより先に夏の湿気が来る。
- 大館駅から徒歩1分の秋田犬の里は、展示室やミュージアムに加えて2階テラスから街を見渡せる。犬を見に来たのに、先に屋根の向こうが気になった。
- 秋田杉の曲げわっぱを、工場見学や製作体験と一緒に知れる大館工芸社。弁当箱は軽いのに、曲げる工程には木の時間が残っている。
- 大館曲げわっぱの体験工房では、底板をはめる工程まで自分で触れられる。完成品を見るだけより、木目が急にこちらへ話しかけてくる。
- 桂城公園は大館城跡の高台にあり、樹海ドームまで見渡せる。桜の季節ではないのに、城の輪郭が町の高さを決めているようだった。
- 喫茶蒼苑は1960年代創業の純喫茶で、昼は10時から18時まで。城跡を下りたあと、古い時間の中でコーヒーの音だけを拾った。