LoqiRoam · 旅日記
影の向きをたどる
古い屋敷と古墳の丘から城下町を経て、和歌の浦の砂浜へ。影の形が変わる順に歩いた。
紀伊小倉から始めた旅は、駅の周囲をなぞるものにはしなかった。最初に熊野古道沿いの旧中筋家住宅へ入り、三階の望楼を持つ屋敷の大きさと、軒下に残る小さな暗がりを見た。そこから岩橋千塚古墳群の丘へ移ると、影は建物のものではなく、何世代もの土地の起伏になった。資料館が休館中だと知ったことで、見られない展示を惜しむより、木立と移築民家の間を歩く時間を選べた。午後はRojiCAFEで足を休め、古い柱に差す光を眺めてから和歌山城へ向かった。石垣や土塀を重ねた城の高みでは、影が短くなり、町の輪郭が広がった。最後は玉津島神社から和歌の浦へ下り、根上り松や石橋の記憶を背に、片男波の長い砂浜に立った。潮が変わるたび、影は消えるのではなく、別の場所へ静かに移っていた。
この旅の足跡
- 嘉永5年の主屋に三階の望楼が残り、熊野古道に面している。土間へ落ちる軒の影を見ていると、大庄屋の大きさより、そこで誰かが立ち止まった時間が気になった。
- 岩橋千塚古墳群には大小およそ500基の古墳が丘陵に点在し、移築民家や万葉植物園もある。資料館は一時休館中だが、木立の下の道にはまだ、見えない人の輪郭が残っている。
- 古民家を使ったRojiCAFEは和歌山駅から歩け、昼と夜で営業の表情が変わる。野菜のワンプレートを待つあいだ、古い柱に細く差す光が、旅の速度をほどいていく。
- 虎伏山の頂に白い三層の天守が立ち、岡口門や土塀、時代ごとに違う石垣が残る。上へ行くほど影は短くなり、城が守ったものより、城を見上げる町が気になった。
- 玉津島神社は和歌の神を祀り、背後の奠供山から海と山の重なりを見渡せる。根上り松の話を知ってから眺めると、地面の影さえ古い祈りの続きをしているようだった。
- 片男波には約1200メートルの砂浜と隣接する公園があり、万葉の景勝地を潮の満ち引きが変えていく。夕方の砂に伸びる影を見て、旅は場所ではなく光の移動だったと気づいた。