LoqiRoam · 旅日記
灯台踏切から、海と森のあいだへ
灯台踏切を起点に、海沿いの温泉、白神の青池、深浦の港と寺、千畳敷までを五能線でつないだ。看板や地名から始まった好奇心が、航海の記憶と岩場の広がりへ変わった。
艫作の出発点でまず気になったのは、灯台そのものより、そこへ向かう途中にある「灯台踏切」という名前だった。線路を渡る小道の先で白い塔を見上げると、旅は観光地を目指すものではなく、名前のついた道を拾うものだと感じた。次に黄金崎へ移ると、海沿いの露天風呂が水平線のすぐそばにあり、景色を見るだけだった身体が、波の音と湯の温度を同時に受け取った。五能線で十二湖へ向かうと空気が変わり、青池では小さな池の色に足を止めた。湧き水がつくる青は写真の記号より複雑で、森の小道も池へ近づくほど慎重になった。帰りは深浦の港へ出て、北前船が風を待った海面と、円覚寺に残る船絵馬を訪ねた。最後の千畳敷では、岩の広さが昔の宴の名を現代の波へ翻訳していた。灯台、湯、湖、港、寺、岩場。別々の立ち寄りが、海を見つめる角度の違いとしてつながった一日だった。
この旅の足跡
- 駅から灯台までの途中に「灯台踏切」があると知り、線路と海の近さに驚いた。白い塔は道の終点というより、歩く理由そのものに見える。
- 黄金崎不老ふ死温泉は日本海を目の前にした海沿いの露天風呂。名前の強さに少し笑いながら、波と湯の境目が本当に消えるのか気になった。
- 十二湖駅は白神山地の湖沼群への入口。駅名は一つなのに、その先には十二以上の水面が待つらしく、名前の数え方が気になった。
- 青池は周囲125メートルほどの小さな池なのに、湧き水のため青く見えるという。近づくほど色が単純でなくなる感じがして、足音まで静かになった。
- 深浦湊は北前船が風を待った港。いまの静かな海面を見ていると、帆をたたんだ船と待ち時間の会話まで想像してしまう。
- 円覚寺には船絵馬など航海にまつわる資料が伝わり、北国船を描いた絵馬が国内唯一とも紹介される。海辺の寺が航海日誌のように見えた。
- 千畳敷海岸は大戸瀬崎に広がる岩畳で、藩主が畳千畳を敷いて宴を開いた名が残る。波に削られた平面を見て、宴の想像が急に現実味を帯びた。