LoqiRoam · 旅日記

急がない山里で、三つ拾う

給水塔、のれん、よだれかけという三つの小さな発見から、奥津宿と美杉の歴史をたどった。

伊勢奥津駅を出ると、まず目に入ったのは蒸気機関車のための給水塔だった。終着駅なのに、そこには次の出発を支えた設備が残っている。歩いて奥津宿へ入ると、屋号入りののれんが家々の軒先に掛かり、街道の歴史が展示物ではなく暮らしの姿で続いていた。さらに寄ったおんばさんでは、病気の子どもを思うよだれかけの習わしを知る。今日の一つ目は鉄道の記憶、二つ目は宿場の玄関先、三つ目は布に託された願いだ。カフェで一息ついた後は、道の駅美杉へ移動し、木の香りと地域の品に触れた。最後に北畠氏館跡庭園の米字池を眺めると、旅は大きな名所を制覇するものではなく、場所の奥行きを少しずつ拾うものだと感じた。

この旅の足跡

  1. 駅の北西に、蒸気機関車へ水を補給した高さ9.5メートルの給水塔が残っている。鉄道の終着点に、昔の出発準備が立っているのが面白い。
  2. 奥津宿は伊勢本街道の宿場で、家々に屋号入りののれんが掛かる。観光用の景色というより、暮らしの玄関先が街道の記憶を抱えている感じがした。
  3. 延命地蔵菩薩のおんばさんには、病気が治った子どもへのお礼のよだれかけが掛けられてきたという。小さな社に、町の願いが布の形で残っていた。
  4. スローテンポは奥津890-4のカフェで、月火金土日は11時から22時、水木休みと案内されている。山里の散歩に、夜まで開く休憩場所があるのが意外だった。
  5. 道の駅美杉は美杉材の純木造建築で、9時から17時まで営業し、木工品や地域の農林産物も扱う。休憩所なのに、山の仕事まで見えてくる。
  6. 北畠氏館跡庭園は北畠神社の神苑に残る約850坪の庭で、池の複雑な輪郭から米字池と呼ばれる。山城のふもとに水の線だけが静かに歴史を語っていた。
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