LoqiRoam · 旅日記
道が二本出会うところから
街道の分岐から公園、古代寺院跡、水辺、酒蔵通り、城跡へ。寄り道が町の層をつないだ。
北伊丹を出て、まず向かったのは駅の有名な出口ではなく、北村の辻の碑だった。西国街道と多田街道が交わった場所で、道はただ通り過ぎるための線ではなく、誰かの決断が積み重なった場所なのだと感じる。そこから緑ヶ丘公園へ曲がると、古い話はいったん木陰に沈んだ。桜の丘や池の静けさに足を預け、次に伊丹廃寺跡へ。建物が消えたあとに残る基壇は、想像力だけを少し要求してくる。見えない寺を考えながら歩いた先で、昆陽池の水面が突然ひらけた。日本列島の形をした野鳥の島を眺め、地図と鳥が同じ景色にいる不思議を楽しむ。帰りは酒蔵通りへ。白壁と古い町家の間で、町の時間が味や匂いに変わる。最後に有岡城跡の石垣と堀跡を見て、城が町を囲んでいたことを知る。今日の曲がり角は、景色を変えただけではない。伊丹の過去と現在の重なり方を、少しずつ教えてくれた。
この旅の足跡
- 西国街道と多田街道が交わる北村の辻の碑。道が二本出会うだけなのに、昔の人の行き先が急に立ち上がる。ここからどちらへ曲がるか、地図より足に任せたくなった。
- 緑ヶ丘公園は伊丹で最も古い都市公園で、桜の丘や池の風情がある。駅前の気配から少し離れるだけで、歩幅がゆるむのが意外だった。木陰で次の曲がり角を考える。
- 伊丹廃寺跡は緑ヶ丘の住宅地に残る国指定史跡。大きな寺院そのものは見えないのに、基壇の痕跡が地面の下の広がりを想像させる。静かすぎて、かえって耳を澄ました。
- 昆陽池公園の自然池には日本列島を模した野鳥の島がある。都市の真ん中で地図を眺めながら鳥を見るという、少し変な縮尺が面白い。水面の風が旅の向きを変えた。
- 伊丹酒蔵通りには白壁の酒蔵、酒文化の資料館、酒蔵を改装した店が並ぶ。旧岡田家住宅は17世紀の町家で、通りの賑わいの奥に古い商いの骨格が残っていた。
- 有岡城跡はJR伊丹駅前にあり、石垣や土塁、建物・井戸・堀跡が復元されている。城だけでなく町屋まで囲んだ惣構だったと知ると、今の道路の曲がり方まで少し意味深に見えた。