LoqiRoam · 旅日記
影の大きさを測る道
食の驚きから巨木、古橋、山村の道具へ進み、光と影の入れ替わりを土地の記憶としてたどった。
大田口を出て、まずひばり食堂の大きな丼に迎えられた。山の町の昼は思いのほか力強く、その余熱を抱えたまま大杉へ向かう。道の駅では立川そばや碁石茶が棚に並び、土地の味が小さな包装の中で静かに息づいていた。すぐそばの杉の大スギの下では、人の影があまりに薄くなる。そこから吉野川へ戻ると、1911年の旧吉野川橋が赤茶色の線を残していた。立ち入りはできない橋なのに、渡し舟の時代や、橋を見上げた人の気配まで想像できる。終着に選んだ定福寺と豊永郷民俗資料館では、農具や林業用具が山の暮らしを黙って語っていた。帰り道、川の明るさと斜面の影が交互に車窓を流れ、出発点へ戻ったとき、眺めていたのは影ではなく、影が生まれるまでの時間だったのだと思った。
この旅の足跡
- 大豊町役場前のひばり食堂は、大豊米にカツと卵を重ねた名物丼で知られる。量の話題から入ったのに、山の町の親切さまで見えてくるのが不思議だった。
- 道の駅大杉では、そば粉100%の立川そばや碁石茶、銀不老の菓子が並ぶ。休憩所なのに土地の記憶が凝縮され、買う前から棚の影を眺めてしまった。
- 杉の大スギは推定樹齢3000年、南大杉と北大杉が根元で一つになった夫婦杉。幹の大きさより、木の下で人の影が急に小さくなることに驚いた。
- 旧吉野川橋は1911年に輸入鉄材で架けられた、原位置に残る古い道路トラス橋。立入禁止の赤茶色を眺めていると、渡れない道ほど想像を遠くへ運ぶ。
- 定福寺の境内には豊永郷民俗資料館があり、山村の農耕具や林業用具を約12000点収蔵する。木陰の静けさの中で、道具にも使う人の姿が残る気がした。
- 大田口へ戻る道では、吉野川沿いの明るさと山側の濃い影が何度も入れ替わった。出発時にはただの境目だったものが、帰る頃には旅そのものの風景になっていた。