LoqiRoam · 旅日記
水面のあと、雲の向こう
玉之江の大樹から西条の湧水、鉄道、建築、水辺、展望を経て石鎚山を仰いだ。
玉之江を出たとき、空は薄く曇っていた。駅だけを起点にせず、まず県指定天然記念物のエノキへ向かった。大きな幹の下では、出発点の尺度が静かに崩れた。弘法水では海の近くに湧く真水に触れ、西条の地下が地上の景色を支えていることを思った。伊予西条駅そばの鉄道文化館では車両の金属が光を鋭く返し、総合文化会館では壁を移る影がゆっくり時間を見せた。御舟川緑道で水面に戻り、市民の森では視界を燧灘まで広げる。最後に石鎚神社へ向かうと、山は雲に隠れていた。見える時間より見えない時間の方が長い。それでも鳥居の先は明るい。今日は光を見つけたというより、光が消えた場所の輪郭を拾った。
この旅の足跡
- 玉之江のエノキは県指定の天然記念物で、根回りは14メートルを超える。駅前の小さな起点から歩き始めたのに、幹の広がりだけで景色の尺度が変わった。
- 海の中から真水が湧くと伝わる弘法水。西条のうちぬきは名水百選にも選ばれている。潮の近くで水が淡いことに、土地の見えない層を感じた。
- 伊予西条駅のそばの鉄道歴史パークには、南館と北館を含む四つの施設がそろう。開館は9時から17時。車両の金属だけが昼の光を鋭く返していた。
- 西条市総合文化会館は文化会館と中央公民館の複合施設として1996年に開館した。壁面を移る午後の影を見て、建物は音が止まっている時も時間を受け止めていると思った。
- 御舟川緑道は御舟川沿いの自然環境を生かした憩いの場で、自転車の走行は禁止されている。水面の細い明るさと歩く人の影が、同じ流れの中で一度だけ揺れた。
- 市民の森の展望広場からは西条市内と燧灘を一望できる。近くの水面を追ってきた目が、ここで急に遠くまで開いた。光は細部ではなく、水平線の薄さになった。
- 石鎚神社本社は石鎚山を神体山とし、JR石鎚山駅や国道11号からも近い。山は雲に隠れたり現れたりし、見えない時間まで含めて大きく感じられた。