LoqiRoam · 旅日記
水際で、帰る方向を少し忘れた
多度の信仰から水辺、桑名の建築と歴史、七里の渡跡まで、道の曲がり角で土地の時間を重ねた。
在良を出発して、まず多度大社へ向かった。山のふもとの参道には、ただ歩くだけでは拾えない古い緊張がある。けれど社の気配に浸りきる前に、多度川の河原へ曲がった。水音は信仰の物語をいったん横に置き、山と空の間に私を戻してくれた。そこから桑名へ進み、六華苑では和館と洋館が同じ庭を眺める不思議な並びに足を止める。桑名市博物館では、水運と城下町の線が展示の細部から浮かび上がった。最後に七里の渡跡へ出ると、川は出発と到着の境目を曖昧にしていた。帰る道はある。それでも、次にどの角を曲がるかは、まだ決めずにおきたい。
この旅の足跡
- 多度大社は、多度山のふもとに鎮座し、古い祭礼と急な参道が土地の記憶を今にも残している。社殿へ向かうほど人の声が薄れ、私は曲がり角の先を確かめたくなった。
- 多度川は社寺の森を抜けると、急に空の広い河原になる。祭礼の緊張を思わせる場所の近くで、石の間を流れる水は驚くほど静かで、少し長居したくなった。
- 六華苑は和館と洋館が同じ庭に向かい、部屋を変えるたびに光と風の印象が変わる。異なる様式が並ぶ理由を探しているうち、建物より庭の余白が気になった。
- 桑名市博物館では、城下町と水運の記憶が地図や道具の細部に現れる。大きな物語より、何度も描き直されたような町の線に惹かれ、展示の前で予定より長く立ち止まった。
- 七里の渡跡では、東海道の旅が水際でいったん途切れた感覚を味わえる。鳥居の向こうに川がひらけ、出発と到着のどちらにも見える景色だった。次の船を待つように、しばらく動けなかった。