LoqiRoam · 旅日記

影の長さを測る撫養

撫養城跡の高みから板東の歴史、神社の森、地域の記憶、大谷焼の窯へ。影の変化を手がかりに歩いた。

撫養に着いたとき、旅はまだ輪郭を持っていなかった。妙見山公園へ上がると、撫養城跡から見える町の屋根に雲の影がゆっくり流れていた。高みを降りて鳴門市ドイツ館へ向かうと、板東俘虜収容所で生まれた地域との交流の記憶に触れる。景色を集めるつもりだった視線が、いつの間にか土地の時間を探していた。大麻比古神社の参道では、杉の影と大きなクスノキの気配が歩みを遅くし、賀川豊彦記念館では、人が人を支えようとした思想が建物の形に残っていることを知った。最後に大谷焼の窯元へ移ると、登り窯の暗がりから水琴窟の音が返ってきた。旅の終わりに残ったのは、名所の明るさより、壁際や木陰に沈んだ静かなものだった。

この旅の足跡

  1. 妙見山公園の石段では、木漏れ日が手すりの影を細く刻んでいた。撫養城跡から町を見下ろせるのに、視線は足元へ吸い寄せられる。
  2. 鳴門市ドイツ館では、板東俘虜収容所の資料が地域との交流を伝えていた。明るい展示室の影が、遠い戦時の記憶を現在の足元まで引き寄せる。
  3. 大麻比古神社の参道は、杉と大樹の影が道を深くしていた。鳴門市最大のクスノキがあると知り、森の静けさが単なる景色ではなくなる。
  4. 賀川豊彦記念館の外観は、彼が関わった船本牧舎を思わせる意匠だという。建物の影を眺めながら、社会運動の記憶が町の風景に残る形を考えた。
  5. 森陶器の登り窯では、窯の内部に置かれた水琴窟の音を自由に聴ける。土の壁に落ちる影を見ていると、焼く前の器にも時間が宿っている気がした。
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