LoqiRoam · 旅日記
水辺から山寺へ、音の薄い道
犀川の水辺から墨俣宿の歴史をたどり、最後は谷汲山華厳寺で静けさの深まりを感じた。
南宿を出て、まず犀川堤へ向かった。約一・二キロの水辺には、地域の人が手入れしてきたあじさいの道があり、季節の花を見に来る場所でありながら、堤防の風は思ったより私的だった。墨俣一夜城では、一夜で築いたという伝承を抱えた城の姿と、展望台の向こうに広がる濃尾平野を見比べた。物語は激しいのに、景色はひどく穏やかだった。城の裏手に回ると墨俣神社があり、濃尾震災や河川工事を経て社殿が移ったという時間の層に触れる。そこから美濃路へ入り、脇本陣跡と本陣跡を歩いた。建物が残る場所と、道角に記憶だけが残る場所。その差が、宿場の歴史をかえって近く感じさせた。最後は公共交通で谷汲山へ移った。門前町を抜け、杉の間の華厳寺に着くころには、平野で聞いていた車や人の音が遠くなっていた。名所を集めたというより、音の濃さが少しずつ変わる道を選んだ旅だった。
この旅の足跡
- 犀川堤は約1.2キロ続くあじさい街道で、地域の人が植えた花が水辺を縁取る。桜の名所とは別の、少し湿った季節の表情に惹かれた。
- 墨俣一夜城は一夜で築いたという伝承を資料館に残し、展望台から濃尾平野を見渡せる。急な戦国の物語と、変わらない平野の広さが並んでいた。
- 墨俣神社は延喜式内社とされ、現在の社殿は濃尾震災と河川工事を経て移ったものだという。城の裏にひっそり残る移転の歴史が意外だった。
- 美濃路墨俣宿の脇本陣跡は濃尾震災後に再建され、当時の構造を色濃く残す。一般公開ではない建物だからこそ、道から眺める距離感に気を配った。
- 墨俣宿本陣跡は、かつて朝鮮通信使なども休泊した宿場の中心だったが、建物は残らず道角に記憶が留まる。消えたものの輪郭を想像した。
- 谷汲山華厳寺は西国三十三所の第三十三番札所で、8時から17時まで拝観できる。約1キロの門前町を抜けるうち、平野の移動音が杉の気配に変わった。