LoqiRoam · 旅日記
光より少し遅れて、琴平
高燈籠から水辺、酒蔵、うどん、石段、芝居小屋、展望台へ。琴平の影が町から山、そして遠景へ変わる一日。
琴平に着いたとき、町はまだ一枚の地図に見えた。高燈籠の大きな影を見上げ、金倉川の鞘橋へ下りると、渡れない橋の下だけが水の時間で動いていた。白壁の金陵の郷では酒蔵の冷気に触れ、参道のうどんで身体を戻す。そこから785段を上る。手すり、石段、木立の影が何度も切り替わり、景色を見に来たはずなのに、最後は一段ごとの明るさを見つめていた。町へ戻って旧金毘羅大芝居の軒下に立つと、木造の暗がりには、まだ誰かの声を待つ空気が残っている。琴平公園では視界が一気にひらけ、社殿も屋根も山の稜線も、遠い影の模様になった。今日追っていたのは暗がりではなく、場所が場所であるための輪郭だった。
この旅の足跡
- 琴平の高燈籠は高さ約25メートル、駅近くに立つ巨大な石灯籠。夕方のような影を足元に落とし、参詣道の入口なのに海を知らせる灯台のようにも見えた。
- 鞘橋は金倉川に架かる約24メートルの屋根付きの珍しい橋で、現在は普段通行できない。渡れない橋の下で、水だけが静かに影を運んでいた。
- 金陵の郷は創業当時の白壁の酒蔵を残す資料館で、酒造りの道具と清酒の文化に触れられる。白壁の影は冷たく、蔵の奥だけ季節が遅れているようだった。
- こんぴらうどんは参道筋で8時から17時まで営業する純手打ちの讃岐うどん店。湯気の向こうで器の縁に影が揺れ、登る前の気持ちが少し現実へ戻った。
- 金刀比羅宮の御本宮までは表参道から785段、片道およそ30分。段ごとに手すりと木立の影が切り替わり、登るほど景色より足元の一段が鮮明になった。
- 旧金毘羅大芝居は1835年に建てられた現存最古の劇場建築で、舞台装置も人力の仕組みを伝える。木造の軒下に立つと、見えない観客の気配が暗がりから戻ってきた。
- 琴平公園の山頂展望台からは金刀比羅宮の社殿、讃岐平野、讃岐富士や瀬戸内海まで見渡せる。近くで追った影が町の屋根の細い線になり、遠くへほどけていった。