LoqiRoam · 旅日記

木陰から水面へ

石上神宮から山の辺の道、天理の門前町、古墳を経て、奈良公園の二つの池へ向かった。

櫟本を出て、まず石上神宮の木陰に入った。国宝の拝殿と境内の鶏が、別々のものなのに同じ朝の光を受けている。山の辺の道を南へ進むと、内山永久寺跡では寺の姿が消え、本堂池だけが残っていた。建物の不在を探すつもりが、水面に映る空のほうへ目が向いた。天理本通りでは門前町の店先と人の歩幅に戻り、そこから崇神天皇陵へ移ると、濠の広がりが時間を遠くした。最後は奈良公園へ出て、浮見堂の輪郭が風でほどけるのを見た。猿沢池では柳と五重塔の像が水に揺れ、近くの通りの音まで薄く映り込む。森、失われた池、商店街、古墳、公園、町の池。光は場所を同じにしないまま、歩く理由だけを静かにつないでいた。

この旅の足跡

  1. 木々の間に古い建物が沈んでいる。国宝の拝殿と、境内を歩く鶏の白さが同じ光を受けていた。静かなのに視線が途切れない。
  2. 寺は消え、池だけが残る。水面に桜や空が映るという説明を読んで、失われた建物より残った反射のほうが強く見えた。
  3. 全長1キロ、約180店。神具店や飲食店が並ぶ門前町は、山道の静けさとは違う細かな反射を店先に抱えていそうだ。
  4. 濠をめぐらせた古墳は、丘陵の形をそのまま光の器にしている。水面の向こうに古代を想像すると、道の時間が急に深くなった。
  5. 鷺池に浮かぶ六角形のお堂。水面に映る輪郭が風でほどけるたび、建物が静止していないことに気づいた。
  6. 周囲360メートルの人工池。柳と五重塔が映るはずの水は、濁らず澄まず、夕方の光だけを少しずつ変えていた。
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