LoqiRoam · 旅日記

影の濃淡をたどる午後

公園の高低差から学生街、文化、古書の通り、神田川、庭園へ。固定された影と水に揺れる影の違いをたどった。

西早稲田を出ると、最初に向かった戸山公園で街の高さが少しだけ変わった。箱根山の斜面を上がるにつれ、建物の壁に切られていた光が、木の葉のあいだから落ちてくる光へ変わる。そこから学習院旧正門の端正な陰影、劇場の姿をした博物館、古書と湯気が並ぶ早稲田通りへ。静かなものばかりを選んだつもりなのに、街の音は消えず、むしろ影の輪郭を濃くしていた。最後は神田川へ下り、橋の欄干の線が水面にほどけるのを眺めた。肥後細川庭園の池のそばでは、歩く理由さえ薄くなった。ただ暗がりの奥に残る明るさだけが、帰り道の方向を知っていた。

この旅の足跡

  1. 箱根山の頂は標高44.6メートル。山手線内の最高峰という肩書きより、登り切ったあと木々の間から空が急に広くなることに驚いた。足元の影が短くなる。
  2. 学習院女子大学の旧正門は、現役の門というより時間をくぐらせる額縁のように立っている。移築の来歴を知ると、柵越しの陰影まで少し遠い時代に見えた。
  3. 早稲田大学の演劇博物館は、劇場を模した外観そのものが舞台装置のようだ。無料で入れる展示室を前にすると、柱の影が芝居の始まりを待っているように見えた。
  4. 早稲田通りには古書店とラーメン店が集まるという、この界隈らしい組み合わせがある。背表紙の細い影と湯気の白さが、学生街を二重に見せた。
  5. 神田川沿いの歩行者道は、車道から一段低いところで水の近くにいる感覚をつくる。高戸橋の欄干の影が流れに重なり、橋は境目ではなく揺れる線に見えた。
  6. 肥後細川庭園は目白台の自然を生かした池泉回遊式庭園で、かつて細川家の下屋敷だった。池の縁の木陰は深いのに、水面だけが夕方を受け取り、帰り道を急がせなかった。
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