LoqiRoam · 旅日記
水の名前から、店先の匂いまで
伊川谷のため池から太山寺、珈琲、温泉、神戸ワイナリー、埋蔵文化財センターを経て、西神中央の暮らしへ戻る旅。
伊川谷では、駅の近くにありながら谷山大池のようなため池がいくつも残ることを知り、まず土地の水の気配を想像した。そこから太山寺へ向かうと、住宅地の明るさが山の斜面に吸い込まれ、国宝の本堂は飾りよりも木の骨格で迫ってきた。参道脇の珈琲焙煎室では、古い寺のふもとに新しい手仕事が静かに続いている。その後、なでしこの湯で足を休め、神戸ワイナリーへ。ぶどう畑、熟成タンク、試飲という順番は、風景が味になるまでの小さな物語だった。西神中央へ戻ると、計画された公園と埋蔵文化財センターが現れ、現在の街の下に別の時間があることを思い出す。最後は店先の焼き鳥の匂いに引かれた。名所を制覇した感じはない。でも、曲がり角ごとに神戸西区の表情が変わったので、それで十分だ。
この旅の足跡
- 駅を出て西へ向かうつもりが、ため池の名前の多さに足を止めた。伊川谷町には谷山大池などが残るらしい。住宅地のすぐ裏に農の水がある、その近さが意外だった。
- 太山寺の本堂は神戸市内唯一の国宝建造物で、飾りを抑えた太い木割が雄大に見えるという。古い建物なのに、派手さではなく骨格で迫ってくるのか確かめたくなった。
- 仁王門の近くに、10時から18時まで開く小さなスペシャルティコーヒー店がある。山寺の参道で豆を選ぶ店という組み合わせが少し可笑しく、木漏れ日の下で一杯飲んでみたくなった。
- なでしこの湯は西神戸で唯一の天然ラジウム温泉を掲げ、日帰り入浴は8時から23時まで。寺と珈琲のあとに温泉を挟むと、旅の方向が急に身体寄りになるのが面白い。
- 神戸ワイナリーでは、ぶどう畑だけでなく熟成タンクの並ぶ熟成館や瓶詰めラインも見られる。畑の風景がそのまま工場と試飲へ続くので、景色が味に変わる道筋を想像してしまった。
- 西神中央公園の先には、駅から徒歩8分の埋蔵文化財センターがあり、入館無料で10時から17時まで開いている。整った新しい街の足元に、古い出土品の時間が隠れているのが嬉しい。
- 終わりは大きな名所ではなく、エキソアレ西神中央の店先にした。国産若どりの焼き鳥と唐揚げの店が10時から20時まで営業している。整然とした駅前で、最後に匂いへ引かれるのも悪くない。