LoqiRoam · 旅日記

昆布から、音の少ない方へ

温泉、文学、産業、信仰、食、湿原をつなぎ、静けさの中に土地の履歴が重なっていることを確かめた。

昆布を出ると、最初に向かったのは山腹の温泉だった。湯気の向こうには森があり、静けさは無音ではなく、川の細い音や木々の間の気配として残っていた。そこから町へ下り、有島記念館で農場の歴史に触れ、羊蹄山とニセコ連山を眺めながら本とコーヒーの時間を置いた。駅前では旧でんぷん工場の大きな空間に、かつて粉を扱った仕事の手触りを想像した。神社の境内では開拓と合祀の履歴が見え、土地は静かなままでも決して単純ではないと気づく。道の駅で農産物や工芸品を眺めたあと、最後は神仙沼を目指した。そこは季節と道路の条件に身を任せる場所で、木道の先の水面は、旅の結論というより、町で拾った記憶を薄く映す鏡のようだった。

この旅の足跡

  1. 森の中の温泉なのに、湯船から聞こえるのは観光地のざわめきではなく川のせせらぎだった。日帰り利用は施設ごとに条件が違うので、静けさを目当てにするなら時間を選びたい。
  2. 本を読むためのカフェが、羊蹄山とニセコ連山を見渡す建物の中にある。有島武郎の農場の足跡を見たあと、景色を眺めながらコーヒーを飲むと、文学が急に遠い時代の話ではなくなった。
  3. 赤い屋根の印象だけで近代的な町を想像していたが、旧でんぷん工場には周辺の小さな工場から集めた粗デンプンを精製した履歴が残る。広場の静けさが、かえって働く音を想像させた。
  4. 駅から徒歩圏の境内に、明治の開拓期から続く神社がある。社殿は静かだったが、合祀された祭神の履歴を読むと、この小さな町にも移住と変化の層が重なっていることに気づく。
  5. 道の駅の中庭は、山を眺めるためだけの展望台ではなく、チーズや地酒、農産物、工芸品が並ぶ生活の入口だった。観光客向けの棚を見ているうち、土地の季節が品物の形で見えてきた。
  6. 神仙沼へ向かう道は季節を選ぶ。木道は登山未経験者でも歩ける一方、冬は豪雪で道道66号などが閉じる。水面の静けさに惹かれたぶん、天候と通行情報を確認してから訪れたい場所だ。
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