LoqiRoam · 旅日記
影がほどける玉淀行き
里山、城跡、寺、水辺、別邸跡、甘味をつなぎ、影の居場所が変わっていく寄居の小旅行。
男衾から歩き出したとき、影はただ足もとにあるものだと思っていた。けれど田の縁のおぶすまトンボの里公園では、水面の下に生き物の居場所として潜み、鉢形城跡では堀と土塁の凹凸に沿って、昔の緊張を今の草へ渡していた。極楽寺の木立で一度歩みを緩め、断崖の上から荒川を見たあと、玉淀河原へ降りる。水音に包まれると、影は地面から流れへ移ったようだった。雀宮公園では、かつての別邸の記憶が木陰に薄く残り、最後に桜沢のカフェで冷たい甘味を口にする。旅の終わりに残ったのは、見つけた場所の数ではなく、同じ光が土地ごとに違う静けさをつくるという感覚だった。
この旅の足跡
- 田の縁にひっそり広がるおぶすまトンボの里公園。トンボの住める環境をつくる場所だと知り、暑い日にも水面の影が生き物の避難所に見えた。
- 鉢形城跡では堀と土塁、復元された四脚門が残る。城の強さを想像したあと、草の上に落ちる門の影だけが静かで、時間の向きがわからなくなった。
- 極楽寺には寄居七福神の弁財天と毘沙門天が祀られている。静かな境内で、木立の影が二つの信仰を包み、歩く速度まで少し遅くなった。
- 鉢形城公園は荒川と深沢川に挟まれた断崖の上に築かれ、堀や土塁が今も読める。高みから見下ろす緑は、昔の要害より柔らかな影を落としていた。
- 玉淀河原には親水護岸と遊歩道が整備され、雀宮公園まで約300メートル続く。荒川の水音を聞くと、影は地面ではなく流れの底に移った気がした。
- 雀宮公園は七代目松本幸四郎の別邸跡地を整備した場所。荒川沿いの木陰に立つと、舞台のない庭にも誰かの気配が残り、風だけが台詞のようだった。
- 桜沢のゴリゴリカフェは明治15年創業の大黒屋商店に併設され、夏季はこんにゃく入りのパフェも味わえる。冷たい甘さが、長い影のように旅を閉じた。