LoqiRoam · 旅日記

深草の斜面から、伏見の水路まで

深草の寺と石仏から伏見の名水、酒蔵、水運へ。静かな道が最後に広い川面へ開く旅。

JR藤森を出て、まず深草の山際へ向かった。宝塔寺の石段は、足を進めるほど町の音を薄くし、古い多宝塔を樹木の間から静かに浮かび上がらせた。石峰寺では、若冲の下絵から生まれた五百羅漢を写真に残せないことが、かえって見る時間を長くした。石と苔の表情を覚えたまま南へ下り、御香宮神社で御香水に出会う。水を汲む人が途切れないのを見て、名水は観光資源である前に暮らしの一部なのだと思った。伏水酒蔵小路で味の幅を確かめ、月桂冠大倉記念館で道具と醸造の歴史に触れる。最後は酒蔵の裏の水路を歩き、三栖閘門へ。柳の影が消えて川面が開くと、伏見が酒の町であるだけでなく、舟と水位差を扱ってきた港町だったことが、説明よりも景色から伝わってきた。

この旅の足跡

  1. 宝塔寺では、長い石段の先に重要文化財の本堂と多宝塔が見えた。観光の声が遠のくほど、斜面の静けさが建物を包んでいた。
  2. 石峰寺の五百羅漢は伊藤若冲の下絵をもとに石へ刻まれ、風雨で丸みと苔を帯びている。撮影禁止と知り、記憶だけで見ようと思った。
  3. 御香宮神社では、桃山期の極彩色の社殿と、名水百選の御香水が同じ境内にある。水を汲む人の姿に、名水が今も日常だと気づいた。
  4. 伏水酒蔵小路の十八蔵きき酒セットは、同じ町の酒でも味の幅があることを一度に教えてくれる。食事の気配もあり、旅が町の日常へ戻った。
  5. 月桂冠大倉記念館は酒蔵を使い、酒造りの道具と創業からの物語を見せている。展示の先で試飲を知り、伏見の水が技術へ変わる過程を想像した。
  6. 三栖閘門では、濠川と宇治川の水位差を船が越える仕組みを知った。酒蔵の柳から開けた川面へ景色が変わり、伏見が港町だった実感が残った。
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