LoqiRoam · 旅日記

熱い湯の町で、三つだけ拾う

医王寺の椿、十綱橋の眺め、飯坂温泉の湯と水の記憶をつなぐ小さな発見の旅。

医王寺前で降りると、駅前は旅の答えを急がせない静けさだった。まず杉の奥へ歩き、佐藤兄弟の物語と、蕾のまま散ると伝わる椿を探した。歴史は大きな年号より、花のふるまいに残るらしい。飯坂温泉へ電車で移ると、十綱橋の上で川と斜面の町がひらけた。旧堀切邸では古い土蔵を見たあと足湯に沈み、見学と休憩の境目がほどける。鯖湖湯の約44℃という数字には少し身構えたが、温泉街が暮らしの場であることはよく伝わった。最後に西根神社まで歩くと、湯ではなく堰と田畑を支えた人々の記憶が現れる。花、橋、そして水。小さな三つを拾ったつもりが、町全体のつながりまで手のひらに残った。

この旅の足跡

  1. 医王寺には佐藤兄弟ゆかりの物語だけでなく、乙和御前の悲しみが宿ると伝わる椿がある。蕾のまま散るという花を探すと、史実より伝承のほうが近くに感じられた。
  2. 飯坂温泉駅から歩いてすぐ、十綱橋は大正4年生まれ。橋の上では摺上川の流れと温泉街の斜面が一枚に収まり、駅前の移動がそのまま町の入口の眺めになった。
  3. 旧堀切邸は江戸時代から続く豪農・豪商の旧家で、県内最古の土蔵「十間蔵」が残る。無料で入れるのに、庭の足湯まであり、歴史が急にくつろぎ始めた。
  4. 鯖湖湯は明治時代の共同湯を再現した木と御影石の浴場で、公式案内では約44℃。6時から21時まで入れるが、月曜定休。熱さを想像するだけで足取りが少し慎重になった。
  5. 西根神社は西根堰を築いた佐藤新右衛門と古川善兵衛を祀り、1月と4月のうそかえ祭で知られる。温泉の町の外に、田畑を支える水の記憶が続いていた。
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