LoqiRoam · 旅日記
音の少ない吉備路で
古い町並みから禅寺、古墳、田園の塔、雪舟ゆかりの庭へ移り、静けさの形が少しずつ変わっていく道のり。
総社駅を出たときは、まだ旅の輪郭がなかった。まず商店街筋へ歩き、築年数を重ねた建物の前で、古い町が保存されているだけではなく、今も店や人の暮らしを受け止めていることに気づいた。そこから井山宝福寺へ移ると、通りの生活音が境内の木立にほどけ、雪舟の名を知るより先に、建物の間隔と鐘の余白が印象に残った。作山古墳では一転して空が広がり、古代の土の大きさを足元で測るように歩いた。備中国分寺の五重塔は、その水平な景色の中に静かな芯を立てていた。最後に雪舟生誕地公園で像や陶板画を見て、枯山水の方へ視線を逃がした。帰りの駅前は出発時と同じはずなのに、寺の木陰、古墳の風、田園の塔が重なり、音の少ない場所を探す旅が、場所ではなく見方を探す旅に変わっていた。
この旅の足跡
- 総社商店街筋には築100年以上の建物が点在し、薬の行商の記憶を残す郷土館もある。店先の静けさと、町がまだ使われている感じが意外に近かった。
- 井山宝福寺は山門や仏殿、三重塔が境内に連なり、朝5時から17時まで開かれている。雪舟の修行先という説明より、木立の間の鐘の気配が長く残った。
- 作山古墳は5世紀中ごろの前方後円墳で、全長の大きさを地面の上で実感できる。頂きへ上がると、古代の土が今の田畑を見下ろしているようで少し不思議だった。
- 備中国分寺跡には岡山県で唯一の五重塔が立ち、田園の中で塔だけが垂直に伸びている。近づくほど木の層が見え、遠くからの記号とは違う重さに気づいた。
- 雪舟生誕地公園は赤浜にあり、9時から17時まで開園している。雪舟像や国宝作品の陶板画だけでなく、枯山水を眺める交流室があり、展示の後に視線を休められた。
- 総社駅へ戻る道では、さきほどまでの田園や寺の音が少しずつ車輪と信号の音に混ざった。出発時にはただの駅前だった場所が、帰りには旅全体の境目に見えた。