LoqiRoam · 旅日記
影の濃さを歩く
水辺、公園、社寺、田園、星の暗がり、古木をつなぎ、影の濃さが変わる一日を歩いた。
花崎から歩き始めると、最初に出会ったのは水深の公園だった。池と芝生の明るさの中で、木立の影だけが細かな濃淡を持っていた。そこから鷲宮の社叢へ向かうと、光は同じ昼のものなのに、古い神楽や武士の記憶を抱えた枝の下では少し低く感じられた。さらに浮野の里へ転じ、田掘とクヌギ並木のあいだを進む。水路は土地の境目でありながら、空を映して境目を消していた。加須未来館では、今度は星を見るための暗がりに入り、地上で眺めてきた影が遠い宇宙の輪郭へつながった。總願寺の門前で町の信仰に戻り、最後は玉敷公園の藤の下へ。花がなくても、四百年を越す枝は静かに空を分けている。帰り道、影は消えたのではなく、歩いた場所の内側へ薄く移っていた。
この旅の足跡
- 水深の広い公園には、鯉の池、自然観察園、自転車広場、釣場がある。水面に雲が映る場所なのに、私はまず木立の影の細かさに驚いた。
- 鷲宮神社は『吾妻鏡』に登場し、催馬楽神楽は国の重要無形民俗文化財。境内の木陰は物語を声高に語らず、古さだけを静かに残していた。
- 浮野の里には田掘、クヌギ並木、屋敷林が残り、125haの田園が広がる。道の脇の水路は地図より細く、影が水面で途切れながら続いていた。
- 加須未来館はプラネタリウムと天体観測室を備える総合学習施設。昼の田園を歩いたあとに暗い空間へ入ると、見えていない星の方が近く感じられそうだ。
- 不動ヶ岡不動尊總願寺は関東三大不動の一つで、節分会でも知られる。大きな由緒の前では、門や樹木の影が人の時間を測る物差しに見えた。
- 玉敷公園の藤は推定樹齢400年以上の県指定天然記念物。花の季節でなくても、長く伸びた枝の下には、見上げる人の影を受け止める余白がある。