LoqiRoam · 旅日記
影の長さを測らない午後
鉄の車体、水面、丘陵の木立、大仏の足元へ。街の中で形を変える影を追った午後。
西台を出ると、最初に出会ったのはD51の黒い車体だった。動かない機関車の下に落ちた影を見ていると、街には使われなくなった時間も、まだ形を保ったまま残っているのだと思った。そこから浮間公園へ移り、風車と浮間ヶ池の水面を眺めた。鉄の重さが水にほどけ、風車の羽根よりも先に、雲の影が岸を渡っていく。午後の後半は赤塚へ向かった。溜池の静けさ、郷土資料館の旧田中家住宅、武蔵野の気配を残す植物園。過去をしまう建物と、今も伸びる葉が隣り合っていた。最後に乗蓮寺の東京大仏を見上げると、視線は自然に足元へ戻った。大きな仏よりも、その足元で濃くなる木の影が、今日の旅の終わりを静かに告げていた。
この旅の足跡
- 線路脇の公園にD51形蒸気機関車と都バスの実物が並び、子ども向けの乗り物まで無料だった。鉄の影が、思ったより長い。
- 浮間ヶ池は公園の大部分を占め、岸辺には風車が立つ。水面に映るはずの羽根を眺めていると、風より先に影が動いた気がした。
- 赤塚溜池公園は板橋十景のひとつで、池の周囲に梅や木立が残る。水面は穏やかなのに、斜面の影だけが先へ進んでいた。
- 赤塚城址に隣接する郷土資料館には、江戸時代の萱葺き民家を移築した旧田中家住宅がある。展示室の外にも、時間の影が残っていた。
- 赤塚植物園は武蔵野の面影を残す丘陵地にあり、木々の間の小径では植物の名前より先に葉の影が目に入る。歩みが自然に遅くなった。
- 乗蓮寺の東京大仏は高さ13メートルで、境内は午後四時前まで入れる。近づくほど大きさより、足元に落ちた木の影の濃さが残った。