LoqiRoam · 旅日記
海辺の影がほどける日
灯台、海辺の湯、十二湖、深浦の寺と資料館をつなぎ、自然と記憶に残る影を眺めた。
ウェスパ椿山を出ると、最初に見えたのは海へ突き出す白い灯台だった。艫作埼の輪郭は明るいのに、その足元の岩だけが濃く沈んでいる。そこから黄金崎の湯へ下り、波打ち際の露天風呂が海と湯の境目を曖昧にするのを想像した。駅のそばの物産館で一度目を休ませ、五能線沿いを南へ向かう。十二湖では青池の水中に倒れた木が光を受け、日本キャニオンでは白い崖が逆に光を跳ね返した。自然の奥へ入ったあと、深浦の円覚寺で、時化に遭った船を導いたという光の伝説に出会う。最後は歴史民俗資料館と美術館へ。埋め立てで姿を変えた猿神鼻の記憶を前にすると、見える景色だけが土地のすべてではないと分かる。帰り道、海はもう夕暮れの色ではなく、暗さの中にかすかな明るさを抱えていた。
この旅の足跡
- 白い灯台が海へ突き出す艫作埼は、足元の岩に細い影を落としていた。常時開放ではないと知り、遠くから見える輪郭だけを追う時間になった。
- 波打ち際の露天風呂は、海と湯の境目が曖昧になる場所だった。悪天候時は利用できず、受付時刻にも幅があるため、入浴よりも鉄分を含む湯気と海面の揺れを眺める寄り道にした。
- 駅に隣接する物産館では、旅の景色が土産物の色へ縮まっていく。観光案内所もあるので、海を見続けた目をいったん棚の高さまで下ろし、土地の暮らしを想像した。
- 青池は水中の枯れたブナを抱えたまま、見る角度で青の深さを変える。春先は青池デッキまで歩けても、ほかの道には残雪やぬかるみがあるという。その不確かさまで景色の一部に見えた。
- 日本キャニオンの白い斜面は、森の青池とは別の仕方で光を返す。遠くから眺める崖なのに、地面の陰影が大きすぎて、山が静かにこちらを見返しているようだった。
- 円覚寺には、海上の時化から船を導いた光の伝説と、船乗りが奉納したまげ額が残る。境内の木陰に立つと、信仰は遠い昔の話ではなく、海を恐れた人の体温として近づいてきた。
- 深浦町歴史民俗資料館・美術館には、埋め立てで姿を変えた猿神鼻の記憶が残る。海辺で見えなくなった洞門が、展示の中ではかえって輪郭を増していた。