LoqiRoam · 旅日記

屋根の下から庭の奥へ

高みの遠景からカフェ、公園、街道、旧邸へ移り、筑豊の地形と記憶に落ちる影を追った。

中泉から始めた旅は、最初から目的地を決めていたわけではなかった。大将陣山へ上がると、飯塚の町は細かな建物の集まりではなく、山と谷に抱かれた一枚の地図のように見えた。そこから坂を下り、文具と雑貨の隣にあるカフェで、視線を遠くから机の上へ戻した。勝盛公園では、朱塗りの橋と池の水鳥の向こうに、石炭を運んだSLが立っていた。黒い車体の影は、花や水の明るさをかえって深くしていた。本町商店街では、長崎街道の記憶がアーケードの天井に折り重なり、歩くたびに日差しが細く切れた。最後に旧伊藤伝右衛門邸の庭へ入ると、ステンドグラスや長い廊下の意匠よりも、誰もいない部屋に差した光の方が強く残った。影を眺めるつもりが、場所に残された時間の影を追う旅になっていた。

この旅の足跡

  1. 標高112mの大将陣山は、頂上から飯塚の町と「筑豊富士」と呼ばれるボタ山を見渡せる。遠くの山影まで一度に見え、街が思ったより地形の中に沈んでいることに驚いた。
  2. 文具のたまおき本店に併設されたCafe CuLuReは、雑貨の気配と11時から17時半の落ち着いたカフェ時間が隣り合う。紙の白さと珈琲の影が同じ机に落ちるのか、確かめたくなった。
  3. 勝盛公園には約300本の桜と約8000本のツツジ、石炭輸送で活躍したSL、朱塗りの指月橋がある。池の外周を歩くと、産業の黒と水鳥の動きが同じ景色に残っている。
  4. 飯塚本町商店街は長崎街道飯塚宿をそのままアーケードにした街で、日本初のドーム型天井を掲げる。屋根の下では日差しが細く切られ、店先ごとに別の時間が落ちていた。
  5. 旧伊藤伝右衛門邸には、ひし形のステンドグラス、アールヌーヴォー調の暖炉、畳を一畳ずつ敷いた長い廊下が残る。庭の光は豪華さを照らすだけでなく、住んだ人の不在まで浮かび上がらせる。
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