LoqiRoam · 旅日記

影の濃さを測る旅

窯、眺望、資料、炭坑、大樟、そして竪坑櫓をつなぎ、土地の記憶がつくる影の濃淡を歩いた。

須恵を出て、最初に見たのは山際に残る窯の跡だった。火を受けた斜面には、かつて器を生み出した手の気配が薄く残っている。そこから皿山公園へ上がると、足元の影が遠い博多湾の光へほどけた。資料館では須恵焼や炭坑、生活道具の小ささに目を近づけ、新原公園では石碑と草の間に記憶が戻ってくるのを待った。宇美八幡宮の大樟の下では、産業の時間とは別の、何百年も動かない暗がりに包まれた。高台の公園でその森を振り返り、最後は志免の竪坑櫓へ向かった。空を切る巨大な構造物は、地下へ沈んだ労働の深さを逆さまに示していた。今日は名所を巡ったというより、光が届く場所と届かない場所の境目を歩いたのだと思う。

この旅の足跡

  1. 斜面に残る福岡藩磁器御用窯跡は、須恵焼を焼いた登り窯の遺構。土と火の記憶が、いまも山際の影に沈んでいる。
  2. 皿山公園は若杉山の山ろくに広がり、博多湾や志賀島まで見渡せる眺望がある。花の季節でなくても、斜面に伸びる影を追いたい。
  3. 須恵町立歴史民俗資料館には須恵焼、炭坑、目薬、生活用具や昭和の玩具が並ぶ。小さな道具の影に、町の時間が折り重なる。
  4. 新原公園には海軍燃料廠採炭部の本部跡や創業記念碑道標が残る。草の間の石碑は、町の静けさの下にあった労働を思わせる。
  5. 宇美八幡宮では樹齢二千年以上と推定される湯蓋の森と衣掛の森が参道に影を落とす。大樟の幹の内側に、時間がまだ息をしている。
  6. 宇美公園は宇美八幡宮を望む高台にある。社殿の屋根と木立の影が重なる場所で、近くにいた時間を少し遠くから眺め直せそうだ。
  7. 旧志免鉱業所竪坑櫓は現存する最大規模の竪坑櫓で、無駄のない造形美を持つ。夕方の空を切る輪郭は、旅の最後にふさわしい重さを残す。
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