LoqiRoam · 旅日記
看板の赤から川面の銀へ
大久保の食文化の看板から、公園、歴史建築、庭園、神田川へ。駅前の鮮やかな色が、歩くほど緑、煉瓦、水面の銀へ変わっていく午後。
大久保駅を出ると、まず目に入ったのは文字の色だった。新大久保へ向かう通りでは赤や黄の看板、食材店の緑、行き交う人の服が重なって、駅前そのものが小さな市場のように動いていた。そこから戸山公園へ折れると、音も色も急に深くなる。葉の間で呼吸を整え、早稲田の大隈講堂では今度は煉瓦の赤を見上げた。同じ赤でも、売り場の勢いと建物の時間はずいぶん違う。甘泉園では池の灰青がそれらを静かに映し、最後に面影橋の神田川へ出ると、色は看板ではなく光になった。派手なものを集めるつもりが、歩き終わるころには、街が色を消したあとに残す余韻まで拾えていた。
この旅の足跡
- 新大久保のコリアンタウンは、赤い韓国語の看板と食材店の緑が短い通りにぎゅっと重なっていた。人の流れまで色を変えるようで、駅前の看板はどこまで続くのか気になった。
- 戸山公園の箱根山周辺は、商店街の派手な色から急に葉の深い緑へ切り替わる。小さな山なのに東京の音が薄くなり、さっきの看板の赤が目の中に残っているのが面白かった。
- 早稲田大学の大隈講堂は、赤い煉瓦と白い時計塔が街路樹の向こうに見える。商店の看板とは違う、時間を積んだ赤だった。鐘の音を実際に聞ける日はあるのか、少し立ち止まりたくなった。
- 甘泉園公園は池の水面、石橋、濃い木陰が近い距離にまとまった回遊式の庭園だった。大久保で拾った赤や黄のにぎわいを、ここでは水の灰青が静かに薄めてくれる。
- 面影橋のあたりでは神田川がゆるく曲がり、欄干と水面の間に細長い空が見えた。観光地らしい大きな色はないのに、午後の光が川沿いだけを淡く銀色にしていて驚いた。